網膜色素変性症に対するビタミンAおよび魚油の投与

レビューの論点

網膜色素変性症(RP)の人の視力障害の進行を遅延させるためにビタミンAおよび魚油がどの程度有効であるか、また、これらの投与が安全であるかどうかを検証した。

背景

網膜色素変性症(RP)は、徐々に視力消失が進行する一群の遺伝性眼疾患に付与された名称である。RPの人には、暗所での視力障害や周辺視野の問題(「管状視」を生じる可能性)が認められ、多くの場合、徐々に視力を消失する。RPは、周辺視野の問題を検出する視野検査や、眼球上の電極から発する閃光に対する眼球の反応を測定してRPの進行度を判定する網膜電図検査によって診断される。

研究の特性

米国およびカナダで実施された3件の臨床研究を同定した。これらの研究には4歳から55歳のRP患者866例が参加し、被験物質投与後の追跡期間は平均4年であった。1件の試験では、魚油抽出物(ドコサヘキサエン酸(DHA 400 mg/日))とプラセボ(偽薬)を比較した。別の試験では、ビタミンA(15000 IU/日)をビタミンE(400 IU/日)またはごく低濃度のビタミン(微量ビタミンA+微量ビタミンE)と比較した。また、他の試験ではDHA(1200 mg/日)+ビタミンA(15000 IU/日)とビタミンA単独(15000 IU/日)を比較した。本エビデンスは2013年8月現在のものである。

主な結果

いずれの研究でも次のアウトカムを測定した:視野の増悪、視力(鮮明さ)の増悪、網膜電図測定結果の増悪。概して、ビタミンAを単独投与または魚油(DHA)と併用投与した参加者をプラセボ投与した参加者と比較した場合、上記のアウトカムに差異は認められず、高用量のビタミンAまたは魚油を投与してもRP患者の視力障害の進行に有意な遅延はみられないことを意味している。いずれの研究でも、ビタミンAまたは魚油による全身性の有害事象は報告されなかった。一方で、高用量ビタミンAおよび魚油による長期有害作用は不明である。

エビデンスの質

これらの試験は適切にデザイン・実施されていたため、対象研究すべての品質を良好と判断した。

著者の結論: 

3件のRCTの結果によると、RPの人にビタミンAおよびDHAのいずれかまたは両方を投与した場合の有益性を、追跡1年目の視野およびERG振幅の変化の平均値ならびに追跡5年目の視力変化の平均値で表した場合、明確なエビデンスは得られていない。本レビューで対象とした研究の一部には、過去のビタミンA暴露に起因する差動効果が示唆される計画外のサブグループ解析が含まれていたため、今後RCTを実施する際には、試験責任医師はこの問題を考慮すべきである。今後の試験では、臨床的および統計学的に意義のある投与群間差を検出するために十分な検出力が保証されるサンプルサイズを計算する際に、過去のコホート研究に加えて本レビューの対象試験に含まれていたERG振幅の変化および他のアウトカム指標を考慮すべきである。

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背景: 

網膜色素変性症(RP)は、網膜の光受容体の進行性変性を特徴とする一群の遺伝性眼疾患である。高度の視力障害の結果、法的盲を生じる場合がある。小児期または成人期に、夜間の視力低下(夜盲)や周辺視野の狭窄(視野消失)などの症状が現れる。視野消失は進行性で、通常、中心視野狭窄は病期の後期まで認められない。世界のRPの有病割合は4000人に1人で、米国の患者数は100,000人である。現時点では、効果が実証されたRPの治療法はない。

目的: 

本レビューの目的は、RP進行抑制に対するビタミンAおよび魚油(ドコサヘキサエン酸(DHA))の有効性および安全性に関して可能な限り最善のエビデンスを総合することであった。

検索戦略: 

CENTRAL(Cochrane Eyes and Vision Group Trials Registerを含む)(2013年第7版)、Ovid MEDLINE、Ovid MEDLINE In-ProcessおよびOther Non-Indexed Citations、Ovid MEDLINE Daily、Ovid OLDMEDLINE (1946年1月〜2013年8月)、EMBASE(1980年1月〜2013年8月)、Latin American and Caribbean Health Sciences Literature Database(LILACS)(1982年1月〜2013年8月)、metaRegister of Controlled Trials (mRCT)(www.controlled-trials.com)、ClinicalTrials.gov(www.clinicaltrials.gov)およびWHO International Clinical Trials Registry Platform(ICTRP) (www.who.int/ictrp/search/en)を検索した。 試験の電子検索では、日付または言語による制限を行わなかった。電子データベースの最終検索日は2013年8月20日であった。

選択基準: 

RPの治療としてビタミンA、魚油(DHA)またはその両方の有効性を評価したランダム化比較試験(RCT)を対象とした。クラスターランダム化試験およびクロスオーバー試験は除外した。

データ収集と分析: 

次のアウトカムを事前に規定した:ベースライン来院時からの視野変化の平均値、ベースライン時からの網膜電図(ERG)振幅の変化の平均値、光干渉断層法(OCT)により測定した追跡1年目の解剖学的変化、追跡5年目の視力変化の平均値。2名の著者が独立して、すべての対象試験および出版物からの抽出データのバイアスのリスクを評価した。また、出版物に掲載された試験のうち、無作為割り付けした患者のアウトカムが一部報告されていなかった試験については、試験責任医師に詳細情報を問い合わせた。

主な結果: 

タイトルおよびアブストラクト394件、ClinicalTrials.govの記録9件をレビューし、選択基準を満たした3件のRCTを選び出した。3件の試験で、種々の型の遺伝性素因による4歳から55歳までのRP患者総計866例を対象とした。1件の試験ではビタミンA単独の効果を、別の試験ではDHA単独の効果を評価し、また、他の試験ではDHAとビタミンAを併用した場合とビタミンA単独の場合の効果を比較評価した。いずれのRCTについても試験実施計画書を入手することができなかったため、すべての試験で選択的報告バイアスは不明であった。さらに、1件の試験ではランダムシーケンスの生成法を明記していなかったため、バイアスのリスクは不明であった。他のドメインに関しては、3件の試験はいずれもバイアスのリスクは低いと判定された。参加者および対象試験全体の介入が臨床的に異質性があったため、メタアナリシスは実施しなかった。

いずれの研究報告にも、主要アウトカムであるベースライン時から1年目の視野変化の平均値は報告されなかった。これら3件の試験では、有害性または有害事象は報告されなかった。いずれの試験でも、視野消失または視力消失の進行に対するビタミン補充の有益性に統計学的有意性は報告されなかった。3件の試験のうち2件では、一部のサブグループ間でERG振幅に統計学的有意性が認められたが、これらの結果は他の試験では再現・実証されていない。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2016.1.6]
《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。

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