成人の前十字靭帯断裂に対する二重束再建術と一重束再建術との比較

前十字靭帯損傷は、よくみられる膝の軟部組織損傷です。前十字靭帯損傷患者、特によく体を動かす若い男性は、膝が不安定になるため、通常は損傷前の活動レベルに戻ることがありません。前十字靭帯断裂の外科的治療では移植片を使用した前十字靭帯再建術を行い、これは、靱帯挿入部位の脛骨と大腿骨にドリルで穴を開け、そのトンネルから移植片(通常、患者から採取した腱)を通して固定するものです。修復には一重束法または二重束法を用います。前十字靭帯は主として2つの異なる部分、すなわち「束」からできています。一重束再建術ではこれらの束のうち1つを修復するのに対し、二重束再建術では両方の束を修復します。二重束再建術は、一重束再建術に比べて膝の安定性が良好ですが、技術的に難しく体に対する影響も大きくなります。このレビューの目的は、二重束再建術の方が一重束再建術よりも良好な結果が得られるかどうか調べることでした。 17件の試験を選択しました。1,433名の患者が対象となり、その大半は身体をよく動かす若い成人でした。選択した試験にはすべて、結果の信頼性を損なう可能性のある方法論的弱点がありました。個々のアウトカムの統合に対し利用可能なデータは最大9件の試験から得られました。 膝の機能的スコア、有害作用と合併症(感染、固定具による疼痛などの機器的問題、移植不全)、関節可動域(屈曲および伸展不足)という点で2群間に違いがあるという十分なエビデンスはありませんでした。長期の追跡で、臨床医が評価した膝の安定性指標、断裂再発率、半月板損傷新規発症については二重束再建術後の方が優れていました。 成人の前十字靭帯断裂に対し、二重束再建術の方が一重束再建術よりよい結果が得られると言えるほどの十分なエビデンスはないと結論しました。しかし、膝の安定性、および前十字靭帯断裂再発または半月板損傷新規発症予防について、前十字靭帯二重束再建術の方が優れた結果を得られるという限定的なエビデンスがみられました。

著者の結論: 

成人での前十字靭帯断裂に対する一重束再建術に比べた二重束再建術の有効性を明らかにするエビデンスは不十分であったが、膝安定性の客観的計測値およびACL断裂再発または新規半月板損傷の予防において二重束再建術による結果の方が優れているという限定的なエビデンスがみられた。成人の前十字靭帯断裂に対する二重束再建術と一重束再建術との高品質、大規模、適切な報告を行ったRCTは、妥当であると考えられる。

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背景: 

前十字靭帯断裂に対する関節鏡下再建術は、一般的な整形外科的処置である。通常の一重束再建術と比較して「より解剖学的な」アプローチを示す二重束再建術の方がアウトカムを改善させるかどうか議論されている。

目的: 

前十字靭帯損傷成人を対象に、一重束再建術と比較した二重束再建術の効果を評価すること。

検索戦略: 

Cochrane Bone, Joint and Muscle Trauma Group Specialised Register(~2012年2月)、Cochrane Central Register of Controlled Trials(CENTRAL)(コクラン・ライブラリ2012年第2号)、MEDLINE(1966~2012年2月第3週)、EMBASE(1980~2012年第8週)を検索した。また試験登録、学会抄録を検索し必要であれば著者に連絡を取った。

選択基準: 

成人の前十字靭帯(ACL)断裂に対する二重束再建術と一重束再建術とを比較しているランダム化比較試験(RCT)および準RCT

データ収集と分析: 

2名のレビューアが別々に論文を選択し、バイアスリスクを評価しデータを抽出した。欠測している情報を得るため研究者に連絡を取った。適宜、類似の研究結果をプールした。

主な結果: 

17件の試験を選択した。1,433人が対象となり、その大半は身体活動をよく行う若年成人であった。選択した試験はすべて、方法論的弱点を有しバイアスリスクがあり、特に割りつけの隠蔵化(コンシールメント)が不十分であるか欠如しているため選択バイアスがあった。個々のアウトカムの統合に対し利用可能なデータは最大9試験、参加者の54%から得られた。 中期(術後6ヵ月~2年)および長期(術後2~5年)において、膝の主観的機能スコア(主観的IKDCスコア、Tegner activityスコア、Lysholmスコア)について二重束再建術と一重束再建術に統計学的有意差および臨床的に意味のある差はなかった。例えばLysholmスコア[0~100(最良)]の長期結果では、平均差(MD)0.12、95%信頼区間(CI)-1.50~1.75であった(5試験、参加者263名)。試験で唯一報告のあった長期の膝痛について、2群間に統計学的有意差を認めなかった。有害作用および合併症[例、9件の試験により報告された感染は7/285対7/393、リスク比(RR)1.14、95%CI 0.46~2.81;6件の試験により報告された移植不全は1/169対4/185、RR 0.45、95%CI 0.07~2.90]について、2群間に有意差はなかった。 5件の試験による限定的なデータでは、二重束再建術後の方が損傷前活動性レベルへの復帰が良好であった(147/162対208/255、RR 1.15、95%CI 1.07~1.25)。長期追跡時、IKDC膝試験(正常またはほぼ正常群:325/344対386/429、RR 1.05、95%CI 1.01~1.08、9試験)、KT-1000 arthrometerによる膝安定性計測(MD -0.74 mm、95%CI -1.10~-0.37、5試験、参加者363名)、ピボットシフト検査による膝回旋安定性(正常またはほぼ正常群:293/298対382/415、RR 1.06、95%CI 1.02~1.09、9試験)について、二重束再建術を支持する統計学的有意差がみられた。また、半月板損傷の新規発症(9/240対24/358、RR 0.46、95%CI 0.23~0.92、6試験)、および外傷性ACL断裂(1/120対8/149、RR 0.17、95%CI 0.03~0.96、3試験)について、二重束再建術を支持する統計学的有意差がみられた。関節可動域(屈曲および伸展)不足について2群間に統計学的有意差はなかった。

訳注: 

監  訳: 内藤 徹,2014.1.28

実施組織: 厚生労働省委託事業によりMindsが実施した。

ご注意 : この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、Minds事務局までご連絡ください。Mindsでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、編集作業に伴うタイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。

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