小児期および思春期における注意欠陥多動性障害(ADHD)に対する多価不応和脂肪酸(PUFA)補充

注意欠陥多動性障害(ADHD)は小児・思春期の重要な問題で、長期にわたり社会的問題、教育上の問題およびメンタルヘルスの問題を引き起こす。メチルフェニデートやアンフェタミンなどの興奮剤は最も一般的なADHDの治療薬であるが、常に効果的というわけではなく、副作用を生じる場合がある。多価不応和脂肪酸(PUFA)、なかでもオメガ-3 PUFA欠乏がADHDに関連しているというエビデンスが存在する。したがって、PUFA補充はADHDの症状やADHDに関連する問題を改善する可能性がある。このレビューの目的は、PUFA補充が小児・思春期のADHDに対する効果的な治療法であるかどうかを評価することであった。改善の可能性を示す限定的なデータが得られたが、全体的にはPUFA補充の有益性を示すエビデンスはほとんど認められなかった。質の高い研究をさらに実施する必要がある。

著者の結論: 

以上から、PUFA補充が小児・思春期のADHDの症状に有益であるというエビデンスはほとんど存在しない。データの大部分はPUFA補充に利益が認められないことを示していたが、オメガ-3 PUFAとオメガ-6 PUFAを併用した場合に改善が認められることを示す限定的なデータが得られた。

今後の研究では、サンプルサイズが小さい、選択基準が一貫していない、サプリメントの種類および用量の相違、追跡期間が短い、その他の方法論に関する欠点など、この分野における現在の欠点に対処することが重要である。

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背景: 

注意欠陥多動性障害(ADHD)は年齢不相応の注意力散漫、過活動および衝動性を特徴とする小児・思春期の重要な問題で、長期にわたる社会的問題、教育上の問題およびメンタルヘルスの問題を引き起こす。興奮剤であるメチルフェニデートおよびアンフェタミンは最も一般的なADHDの治療薬であるが、常に有効性が高いわけではなく、副作用を生じる場合がある。臨床的および生化学的エビデンスにより、多価不応和脂肪酸(PUFA)欠乏がADHDと関連していることが示唆されている。小児・思春期のADHD患者では、PUFA、特にオメガ-3 PUFAの血漿中濃度および血中濃度が著しく低値を示す。これらの知見は、PUFA補充によってADHDに起因する注意力や行動に関する問題が軽減される可能性を示唆している。

目的: 

小児・思春期ADHDの症状の治療に対するPUFAの有効性を他の治療法またはプラセボと比較すること。

検索戦略: 

2011年7月に、CENTRAL、Ovid MEDLINE、EMBASE、LILACS、PsycINFO、CINAHL、ERIC、ASSIA、Sociological AbstractsおよびDissertation Abstracts Internationalのデータベースを検索した。2011年8月に次のデータベースを検索した:CENTRAL(Cochrane Library 2011年第2号)、MEDLINE(1948年~2011年7月第3週)、EMBASE(1980年~2011年第29週)、PsycINFO(1806年以降)、CINAHL(1937年以降)、BIOSIS(1969年~2011年7月30日)、Science Citation Index(1970年~2011年7月30日)、Social Science Citation Index(1970年~2011年7月30日)、Conference Proceedings Citation Index – Science(1990年~2011年7月30日)、Conference Proceedings Citation Index - Social Science and Humanities(1990年~2011年7月30日)、Cochrane Database of Systematic Reviews (2011年第7号)、DARE(2011年第2号)、Dissertation Abstracts(Dissertation Expressを利用)およびmetaRegister of Controlled Trials (mRCT)。 また、2011年8月2日に次のリポジトリーの論文も検索した:DART、NTLTDおよびTROVE。さらに、新たな参考文献が追加されていないかどうか、関連性のある研究および関連レビューの参考文献リストを確認した。

選択基準: 

2名のレビュー著者が独立してデータベース検索結果を評価した。研究の選出に関する相違点については話し合いによる合意によって解決し、必要に応じてレビューチームの第三者を交えて協議した。

データ収集と分析: 

レビューチームのメンバー2名が独立して参加者および背景、介入法、方法論およびアウトカムデータの詳細を抽出した。相違が特定された場合は、話し合いによる合意またはチームの第三者への照会によって解決した。詳細の解明または欠損データが必要な場合は、あらゆる妥当な手段を試みて著者に問い合わせた。

主な結果: 

本レビューでは、参加者1011例の13件の試験を対象とした。366件の参考文献をスクリーニングした後、23件を関連ありと判断し、全文を入手して対象とした。5件の論文を除外し、13件の試験に関する18件の論文を組み入れた。

対象試験のうち8件は並行デザインで、このうち5件はオメガ-3 PUFAサプリメントとプラセボの比較試験、2件はオメガ-3 PUFAサプリメント+オメガ-6 PUFAサプリメントとプラセボの比較試験、1件はオメガ-3 PUFAと栄養剤の比較試験であった。対象試験のうち5件はクロスオーバーデザインで、このうち2件はオメガ-3/6 PUFAとプラセボの比較試験、2件はオメガ-6 PUFAとプラセボの比較試験、1件はオメガ-3 PUFAとオメガ-6 PUFAの比較試験、1件はオメガ-6 PUFAとデキストロアンフェタミンの比較試験であった。サプリメント投与期間は4週間から16週間であった。

オメガ-3/6 PUFA投与群では、プラセボ投与群と比較して改善率が有意に高値を示した(試験数2件、参加者97例、リスク比[RR]2.19、95%信頼区間[CI]1.04~4.62)。 一方で、すべてのPUFAサプリメント投与群とプラセボ投与群を比較した結果、親の評価によるADHDの症状(試験数5件、参加者413例、標準化平均差[SMD]-0.17、95%CI -0.38~0.03)、注意力散漫(試験数6件、参加者469例、SMD -0.04、95%CI -0.29~0.21)および過活動/衝動性(試験数5件、参加者416例、SMD -0.04, 95%CI -0.25~0.16)に統計学的有意差は認められなかった。

教師の評価による全体的なADHDの症状(試験数4件、参加者324例、SMD 0.05、95%CI -0.18~0.27)、注意力散漫(試験数3件、参加者260例、SMD 0.26、95%CI -0.22~0.74)および過活動/衝動性(試験数3件、参加者259例、SMD 0.10、95%CI -0.16~0.35)に統計学的有意差は認められなかった。

行動、副作用および追跡不能についても群間差は認められなかった。

総じて、その他の比較項目に群間差は認められなかった。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2016.1.6]
《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。

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