早期子宮頸癌術後の放射線治療、または放射線治療と化学療法の併用

現在、早期子宮頸癌で子宮と骨盤リンパ節の摘出を受けた女性に放射線治療をすべきかどうかは医師の間でもはっきりしていない。子宮頸癌再発のリスクが高くなるある一定のリスク因子の組み合わせを有する女性では、医師によりしばしば放射線治療を行う方がよいと判断される。しかし、放射線治療がこれらの女性の総生存を改善したことは一度も示されておらず、手術と放射線治療との併用では副作用および合併症のリスクが増す。これらの女性での生存を放射線治療(化学療法併用を問わず)が改善させるか評価した、すべての入手可能なRCTを検索した。 子宮と骨盤リンパ節の摘出を受けながら再発リスクがある早期子宮頸癌女性を対象に、放射線治療と放射線治療無しを比較した試験は2件しかなかった。これらの2件の試験は女性397名を対象としていた。これらの2件の試験の所見を統合した場合、放射線治療を受けた女性は受けなかった女性に比べて5年以内に癌が再発する確率が平均して40~90%少ないという所見を得た。しかし、当該試験での死亡数は少なかったため、放射線治療で寿命が延びたかどうか確認できなかった。一番正確とされる見積もりでは、治療5年後、放射線治療を受けた女性の方が受けなかった女性に比べて生存している可能性が約20%高かったが、この見積もりでもあまり正確なものとは言えず、実際の見込みは、生存の可能性が3倍高いものから死亡の可能性が60%高いものまの範囲のどこかにあると考えられた。 放射線治療を受けた女性は受けなかった女性に比べて合併症が多い傾向があったが、合併症を発症したと報告した女性はほとんどいなかったため、これが放射線治療ではなく偶然によるものかはっきりしなかった。 本レビューの主な欠点は、放射線治療と化学療法との併用を評価した試験を見出せなかったことと、放射線治療の2件の試験から得られた副作用の情報が非常に限られたものであったことである。

著者の結論: 

IB期子宮頸癌において、(アジュバント)放射線治療が追加治療を実施しない場合に比べて疾患進行のリスクを低下させるというエビデンスは認められ、質は中等度であったが、総生存を改善させるというエビデンスはほとんどなかった。重篤な有害事象に関するエビデンスは解釈が分かれる。

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背景: 

本レビューは、2009年第4号発表のコクランレビューの更新である。早期子宮頸癌女性での根治手術後の骨盤アジュバント放射線治療の適応および有用性についてはいまだに議論がある。病理学的リスク因子のある一定の組み合わせにより再発リスクがかなり高くなると考えられることから、術後に骨盤放射線治療を施行するのは妥当とされているが、それによる全生存の改善は示されておらず、2種類以上の治療(手術と放射線治療)を併用すれば副作用と合併症のリスクが増加する。

目的: 

早期子宮頸癌(FIGO分類IB1期、IB2期またはIIA期)に対する広汎子宮全摘術後のアジュバント療法(放射線治療、化学療法後の放射線治療、化学放射線治療)の有効性および安全性を評価すること。

検索戦略: 

原著レビューを対象に、Cochrane Central Register of Controlled Trials(CENTRAL)2008年第4号を検索した。Cochrane Gynaecological Cancer Group Trials Register、MEDLINE(1950年1月~2008年11月)、EMBASE(1950~2008年11月)。臨床試験登録、学会抄録、選択した研究の参考文献リストも検索し、本分野の専門家に問い合わせた。本更新では、2011年9月までデータベース検索を延長し、進行中の試験についてMetaRegisterを検索した。

選択基準: 

組織診で早期子宮頸癌と確定診断され広汎子宮全摘術と骨盤リンパ節郭清を受けた女性を対象に、アジュバント療法(放射線治療、化学療法後に放射線治療、化学放射線治療)と放射線治療か化学放射線治療をしない群とで比較したランダム化比較試験(RCT)

データ収集と分析: 

2名のレビューアが別々にデータを抽出しバイアスリスクを評価した。グレード3および4の有害事象の情報を試験から収集した。ランダム効果メタアナリシスを用いて結果をプールした。

主な結果: 

アジュバント放射線治療をアジュバント放射線治療なしの群と比較した2件のRCTが選択基準を満たし、IB期の子宮頸癌女性397名をランダム化し、評価していた。これら2件のRCTのメタアナリシスでは、放射線治療を追加した女性としなかった女性との間で5年生存率について有意差を示すことはできなかった[リスク比(RR)=0.8、95%信頼区間(CI)0.3~2.4]。しかし、放射線治療を受けた女性の方が5年時での疾患進行のリスクが有意に低かった(RR0.6、95%CI 0.4~0.9)。 追加治療を受けなかった女性に比べて放射線治療を追加した女性において重篤な有害事象リスクが一貫して高かったが、リスクの上昇は統計学的に有意ではなく、おそらく有害事象の頻度が低かったためであろう。

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