進行上皮性卵巣癌に対する至適一次外科療法

著者の結論: 

進行上皮性卵巣癌に対する一次手術中は、完全な腫瘍縮小を達成するためにあらゆる試みを行うべきである。完全な腫瘍縮小を達成できない場合は、手術目標は至適な(1cm未満)腫瘍残存とすべきである。本エビデンスではバイアスリスクがかかりやすかったため、ランダム化比較試験を実施して、これら患者群の生存期間延長に関連しているのが外科的介入なのか、それとも患者関連因子や疾患関連因子なのかを検討する必要がある。残存腫瘍が1cm未満の患者は残存腫瘍が1cm超の患者よりも依然として予後良好であるという本レビューの知見から、外科学会はこのカテゴリーを残したまま、これを「至適に近い(near optimal)」な腫瘍縮小として再定義するとともに、残存腫瘍が1cm超の患者には「準至適(suboptimal)」な腫瘍縮小という用語を残しておくことを検討すべきである(すなわち従来のcomplete/optimal/suboptimalに代わってoptimal/near optimal/suboptimal)。

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背景: 

卵巣癌は女性では6番目に多い癌である。診断や病期分類に加え、至適な腫瘍縮小を達成するために一次手術(腫瘍の縮小を目的とした外科的試み)が施行されるが、これは残存腫瘍量が上皮性卵巣癌患者の生存を左右する最も重要な予後因子のひとつであるからである。腫瘍縮小手術の至適アウトカムについては、多くの婦人科癌専門医の間で今もなお論争が続いている。Gynaecologic Oncology group(GOG)は現在、「至適(optimal)」の定義を最大径1cm以下の残存腫瘍結節にすることと定義しており、完全な(complete)腫瘍縮小(顕微鏡的残存腫瘍)が理想的な外科的アウトカムであるとしている。術後の残存腫瘍径が進行卵巣癌の重要な予後因子であることは明らかにされてきたものの、残存腫瘍がより少ないことと関連する優れたアウトカムに、外科的処置が直接寄与しているか否かについては明らかになっていない。

目的: 

外科的病期分類で進行上皮性卵巣癌(III期およびIV期)とされた女性を対象に、至適一次腫瘍縮小手術の有効性と安全性を評価する。0~2cmの範囲の様々な残存腫瘍径が総生存期間に及ぼす影響を評価する。

検索戦略: 

Cochrane Central Register of Controlled Trials(CENTRAL)(コクラン・ライブラリ2010年第3号)およびCochrane Gynaecological Cancer Review Group Trials Register、MEDLINEおよびEMBASE (2010年8月まで)を検索した。臨床試験の登録リスト、学会抄録、検索対象となった研究の参考文献一覧も検索したほか、本分野の専門家に連絡を取った。

選択基準: 

外科的病期分類で進行上皮性卵巣癌とされ、一次腫瘍縮小手術後にプラチナ製剤ベースのアジュバント化学療法を受けた成人女性100例以上を対象とした多変量解析を含むランダム化比較試験(RCT)、もしくは前向きおよび後ろ向き観察研究における、残存腫瘍に関する後向きデータ。至適腫瘍縮小が、残存腫瘍の最大径が2cm以下となる手術と定義された研究のみを選択対象とした。

データ収集と分析: 

2名のレビューアが別々にデータを要約し、バイアスリスクを評価した。可能な限り、メタアナリシスでデータを統合した。

主な結果: 

進行卵巣癌に対する一次処置に施行した手術の有効性評価を目的として、同定されたRCTまたは前向き非RCTは皆無であった。選択基準に適合する多変量解析を含む後ろ向き研究11件が検出された。解析から、完全な腫瘍縮小(残存腫瘍が顕微鏡下のみで、肉眼では認められない)の予後に関する重要性が明らかとなったが、それはこれらの患者群で総生存期間(OS)および無増悪生存期間(PFS)が有意に延長していたからである。いずれの研究でもPFSの報告はなかったが、データが十分にそろっていたため、確固たる結論を導くことができた。準至適(suboptimal)な腫瘍縮小(1cm超)を至適な腫瘍縮小(1cm未満)と比較したところ、生存期間推定値は低下したが、それでもまだ腫瘍残存量の少ない群の方が統計学的に有意に良好であった。残存腫瘍径2cm超と2cm未満との比較では、OSに有意差は認められず、PFSにはわずかな差しか認められなかった[ハザード比(HR)1.65、95%CI 0.82~3.31およびHR 1.27、95%CI 1.00~1.61、OSおよびPFSのそれぞれについてP = 0.05)]。重要な予後因子について統計学的に補正されていたものの、後ろ向き研究の特性から、これらの研究にはバイアスがかかりやすく、特に懸念となる選択バイアスには、やはり十分な注意が必要であった。いずれの研究においても有害事象、生活の質(QOL)、費用対効果は治療群別に報告されていないか、満足できるレベルではなかった。

訳注: 

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