出産前後の女性における尿失禁および便失禁の予防・治療に対する骨盤底筋訓練

出産後の女性の3分の1に尿失禁が、10分の1までに便失禁がみられます。 失禁の予防と治療のため、妊娠中および出産後に骨盤底筋訓練が一般的に推奨されています。 この訓練は、骨盤底筋を強くするため1日数回女性が行う運動です。 通常、理学療法士などの医療従事者が指導します。 出産前に骨盤底筋運動を行うと分娩が難しくなるというエビデンスはほとんどありません。 逆に有用であると示唆するエビデンスが集まりつつあります。 このレビューでは、妊娠中尿失禁のない女性でも、出産前後にこの訓練を行うことによって出産後6ヵ月失禁が起こる可能性が低下すると示されました。 胎児が大きい女性、鉗子分娩になると予想される女性など、尿失禁になる危険性が高い女性にもこの訓練は有用であるようでした。 出産後に尿失禁となった女性にも有用で便失禁を少なくするのにも有用でした。 しかし、これらの効果が1年後も続くかどうかについてエビデンスは十分ではありませんでした。 とはいえ、訓練実施率は時間経過とともに低下すると示唆するエビデンスがある程度認められています。

著者の結論: 

第1子出産女性では、産後6ヵ月間までPFMTが尿失禁を予防しうるというエビデンスがある程度みられた。 産後尿失禁が持続する女性ではPFMTが適切な治療であるという広く伝播している推奨については論拠がある。 PFMTの効果は、予防と治療を混合したアプローチよりも目標を定めた場合の方が大きく、 また、特定の女性集団(初妊婦、妊娠早期の膀胱頚部過活動性の女性、胎児が大きい女性、鉗子分娩の女性など)において大きい可能性がある。 上記および他の不明な事項、特に長期の有効性についてさらに検証する必要がある。

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背景: 

出産後女性の約3分の1に尿失禁が、最大10分の1に便失禁がみられる。 失禁の予防と治療のため、妊娠中および出産後に骨盤底筋訓練が一般的に推奨されている。

目的: 

出産前後の通常のケアに比較した骨盤底筋訓練の失禁に対する効果を検討すること。

検索戦略: 

CENTRAL、MEDLINE、MEDLINE in Processの検索を含むCochrane Incontinence Group Specialised Registerおよびハンドサーチ(2012年2月7日検索)、 ならびに関連性のある論文の参考文献を検索した。

選択基準: 

妊婦または出産後女性を対象としたランダム化試験または準ランダム化試験。試験の1群は骨盤底筋訓練(PFMT)を含んでいる必要があった。 もう1群は無PFMT、あるいは通常の出産前ケアまたは出産後ケアのいずれかとした。

データ収集と分析: 

試験の適格性および方法論的質は、別々に評価された。データを抽出しクロスチェックした。不一致は討議により解決した。Cochrane Handbook for Systematic Reviews of Interventionsの記載どおりデータを処理した。異なる3集団、ランダム化時に失禁のない女性(予防)、ランダム化時失禁のあった女性(治療)、前記いずれかの女性の混合集団(予防または治療)を別々に考慮した。妊娠中(出産前)に開始したものと出産後に開始したものに試験をさらに分類した。

主な結果: 

8,485名の女性(PFMT4,231名、コントロール4,254名)の22件の試験が選択基準を満たし解析に寄与した。 集中的出産前PFMTにランダム化された尿失禁のなかった妊婦(予防)は、無PFMTまたは通常の出産前ケアにランダム化された女性より、 出産後6ヵ月まで尿失禁の発現が少なかった[約30%少、リスク比(RR) 0.71、95%CI 0.54~0.95、5試験の統合結果]。 出産後3ヵ月尿失禁が持続し(治療)PFMTを受けた出産後女性は、無治療または出産後の通常ケアを受けた女性より、 出産後12ヵ月間尿失禁の発現が少なかった(約40%少、RR 0.60、95%CI 0.35~1.03、3試験の統合結果)。 プログラムの強度が高いほど治療効果が大きいようであった。 7件の研究結果では、妊娠後期における混合集団(失禁症状のある女性およびない女性)で PFMTを支持する統計学的に有意である結果が示された(RR 0.74、95%CI 0.58~0.94、ランダム効果モデル)。 今日までの試験データに基づくと、予防および治療を混合したPFMTアプローチが出産後いつまで有効であるかはあまり明らかではない (つまり、失禁症状があってもなくてもすべての妊婦または産後女性にPFMTに関する助言を行うべきか不明であった)。 本介入の強度が十分である場合は予防および治療を混合したアプローチが有効である可能性がある。 尿失禁または便失禁のいずれかに対する長期的効果についてエビデンスはほとんどなかった。

訳注: 

監  訳: 林 啓一,2013.2.19

実施組織: 厚生労働省委託事業によりMindsが実施した。

ご注意 : この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、Minds事務局までご連絡ください。Mindsでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、編集作業に伴うタイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。

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