妊娠中のステロイド外用薬の安全性

レビューの論点

妊娠中にステロイド外用薬(ステロイドクリームや軟膏)を使用しても安全か?

背景

ステロイド外用薬は、皮膚疾患の治療薬として最もよく使われる薬である。妊娠中の女性は、皮膚疾患の治療のためにステロイド外用薬が必要になる場合があるが、妊娠中の使用について安全性や有害性については明らかになっていない。妊娠中のステロイド外用薬の使用の安全性を検討することを目的とした。

研究の特徴

このレビューは2009年に発表されたレビューのアップデート版である。2015年7月までに発表された研究を検索したところ、新たに7件の研究が見つかった。全体として、このアップデート版レビューでは、1,601,515件の妊婦を対象とした14件の観察研究が包含された。一般的に、観察研究はランダム化比較試験よりも厳密さに欠けると考えられている。資金源は、10件の研究では学術機関または政府機関であり、4件の研究では報告されていなかった。

主な結果

母体のステロイド外用薬の使用状況と、分娩の方法、先天性異常、早産、アプガースコアの低さとの間に関連性は見られなかった。

特に、妊娠中に高用量で使用した場合、母体が強力または非常に強力なステロイド外用薬を使用していることと低出生体重児との関連を示すエビデンスがいくつかあり、さらなる研究が必要であると考えられる。一方、低用量または中用量の副腎皮質ステロイド外用薬を母体が使用しても、低出生体重児には関連しない。さらに、低用量または中用量のステロイド外用薬は赤ちゃんの死亡を防ぐことができるが、作用の強さが強力または非常に強力なステロイド外用薬を使用した場合には、そのような効果は見られなかった。この結果については、さらなる検討が必要である。

エビデンスの質

入手可能な研究はすべて観察研究であったため、全体的なエビデンスの質は低い。研究参加者を副腎皮質ステロイド外用薬の投与群と無治療群に振り分けるという質の高い研究デザイン(ランダム化比較試験)は、実験的な治療法に胎児がさらされる可能性があるという倫理的な懸念から、一般的には妊娠中の女性を対象とした研究は実施できない。

さらに、エビデンスの質を「非常に低度」に格下げしたのは、特定した研究の結果にばらつきが見られたためである。これはアウトカムに対する効果の推定値の信頼性が低いことを意味している。

訳注: 

《実施組織》 増澤祐子、杉山伸子 翻訳 [2021.10.25] 《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD007346.pub3》

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