低リスク妊娠性絨毛性腫瘍に対する抗癌剤による第一選択治療

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妊娠性絨毛性腫瘍(GTN)は、まれであるが根治可能な疾患で、正常妊娠または奇胎妊娠(胎児ではなく組織が子宮で発育するもの)後の子宮に悪性腫瘍が発症する原因となる。GTN女性は、特異的なスコアリングシステムを用いて低リスクと高リスクに分類される。実際には、すべての低リスクGTN女性は、頸管拡張子宮掻爬術を受けた後化学療法(抗癌剤)を実施する治療で治癒する。メトトレキサートおよびダクチノマイシンは、低リスクGTNの第一選択治療で最もよく使用される2つの薬剤であるが、欧州と北米ではメトトレキサートを支持している。時々第一選択療法は本疾患を治癒させることができない、あるいは投与中止を要する副作用が起こることがあり、第2の治療が必要になる。メトトレキサートが第一選択の場合、ダクチノマイシンが通常第二選択となり、その逆の場合もある。どちらの薬剤が第一選択としてこの低リスク疾患を治癒させる可能性が高いか不明のため、今回のレビューを実施した。さらに、どちらの薬剤の方が副作用が多いか不明である。 今回のレビューでは、ダクチノマイシンの異なる3つの投与レジメンを、用量と投与回数の異なるメトトレキサートと比較している、質が中~高の5件の研究を選択した。全体として、また各投与レジメンの比較で、ダクチノマイシンの方がメトトレキサートに比べて第一選択の場合治癒を得る可能性が高く、治療失敗が少ないようであった。 低リスクGTNに対するこれらの薬剤の相対的副作用に関して、さらなるエビデンスが必要である。両群で最も多く発現した副作用は悪心、疲労、貧血であった。全体として、両群で副作用は比較的軽度であったが、ダクチノマイシン投与女性に重度の副作用が多い傾向がみられ、特に5日間投与で多かった。ダクチノマイシンパルスはダクチノマイシン高用量と治癒率が同程度で副作用は軽度であったことから、GTNの第一選択療法ではダクチノマイシンパルスの方がダクチノマイシン5日間レジメンよりも好ましい。さらに、副作用は軽微で「低用量」メトトレキサートと同程度であったことから、ダクチノマイシンパルスは、低リスクGTNの第一選択療法で最もよく使用されているメトトレキサート(低用量および高用量レジメン)と少なくとも同等であると考えられた。 より従来型の5日間および8日間メトトレキサート投与をダクチノマイシンパルスと比較している大規模試験が進行中であり、これがエビデンス本体に加われば今回の結論を変える可能性がある。

著者の結論: 

ダクチノマイシンの方がメトトレキサートに比べて、低リスクGTNの女性の一次治癒を得る可能性が高く、治療の失敗となる可能性が低かった。副作用に関連するエビデンスは限定的であったが、ダクチノマイシンパルスレジメンは、低用量メトトレキサートレジメンに比べて有意に副作用が多かったため、副作用に関してメトトレキサートの5日間レジメンおよび8日間レジメンと同程度か比較すべきである。

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背景: 

これは2009年第1号発表のコクラン・レビューの更新である。妊娠性絨毛性腫瘍(GTN)は、妊娠中胎児絨毛膜に発生するまれであるが根治可能な疾患である。低リスクGTNの女性のほとんどは、子宮内容除去単独または子宮内容除去と単剤化学療法の併用により治癒する。しかし、化学療法レジメンは世界の治療センターで異なっており、これらの異なるレジメンの比較可能な利益およびリスクは不明である。

目的: 

低リスクGTNの治療における第一選択化学療法の有効性および安全性を検討すること。

検索戦略: 

2008年9月、Cochrane Gynaecological Cancer Group Specialised Register、Cochrane Central Register of Controlled Trials (CENTRAL 2008年第3号)、MEDLINE、EMBASEの電子的検索を行った。さらに、オンライン試験登録簿、学会抄録、同定した研究の参考文献リストを検索した。今回の更新レビューのため、2012年2月にこれらの検索を再度実施した。

選択基準: 

最初のレビューでは、低リスクGTNの治療に対する第一選択化学療法を比較しているランダム化比較試験(RCT)、準RCT、非RCTを選択した。今回の更新レビューでは、RCTのみを選択した。

データ収集と分析: 

2名のレビューアが別々に選択について研究を評価し、事前にデザインしたデータ抽出フォームにデータを抽出した。個々の試験のリスク比(RR)を統合しメタアナリシスを実施した。

主な結果: 

更新レビューには、中~高品質の5件のRCT(女性517名)を選択した。これらの研究すべては、メトトレキサートをダクチノマイシンと比較していた。3件の研究(女性393名)は、メトトレキサート毎週筋注(IM)をダクチノマイシン隔週静注(IV)パルス療法と比較し、1件の研究(女性75名)は、メトトレキサート5日間IMをダクチノマイシン隔週IVパルス療法と比較し、1件の研究(女性49名)は、メトトレキサート-葉酸(MTX-FA)8日間IMをダクチノマイシン5日間IVと比較していた。 全体として、ダクチノマイシンの方がメトトレキサートに比べて一次治癒が有意に高率であった(5件の研究、女性513名、RR 0.64、95%信頼区間(CI)0.54~0.76)。メトトレキサートの方がダクチノマイシンに比べて治療の失敗が有意に多かった(5件の研究、女性513名、RR 3.81、95%CI 1.64~8.86)。このエビデンスの質は中等度と考えられた。 悪心(4件の研究、女性466名、RR 0.61、95%CI 0.29~1.26)および報告された他の個々の副作用について2群間に有意差はなかったが、これらのアウトカムすべてについてのデータは不十分で、異質性が高かったため確証は得られなかった。選択した5件の研究のうち3件ではいずれの群でも重篤な有害事象(SAE)の発現はなく、全体として群間にSAEについて有意差はなかった(5件の研究、女性515名、RR 0.35、95%CI 0.08~1.66、I2 = 60%)が、メトトレキサート群の方がSAEが少ない傾向がみられた。試験間の著しい異質性およびSAEの発現/報告の低い整合性のため、このエビデンスの質は低いと考えられた。

訳注: 

監  訳: 吉田 雅博,2012.11.14

実施組織: 厚生労働省委託事業によりMindsが実施した。

ご注意 : この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、Minds事務局までご連絡ください。Mindsでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、編集作業に伴うタイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。

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