二次治療によって、最初の治療が効かなかった転移のある大腸癌患者の生存期間を改善することができる

レビューの論点

転移のある大腸癌患者で先行する治療が奏効しなかった人に対して、抗癌剤(癌の治療に用いる薬)によって腫瘍の大きさを縮小し、生存期間を改善することができるかどうかをレビューした。いろいろな治療薬レジメンごとの副作用にも着目した。

背景

転移のある大腸癌(大腸以外の部位に拡がった癌)の患者と、先行する1種類の化学療法(一次治療)を施行したにもかかわらず病勢が進行した患者、そして不良な転帰(予後)を改善する目的で2つめの治療(二次治療)を受けることができる患者。((静脈から)点滴注射する)全身療法の治療法を比較した。

試験の特性

本稿のレビューは2016年5月現在のものである。今回の更新では、転移のある大腸癌患者を対象として二次治療の治療成績を調べるために、二次治療に対して化学療法なし(最良支持療法(BSC))または別の二次治療を比較していた臨床試験34件を確認した。

主な結果

得られたエビデンスによれば、二次治療の方が最良の支持療法(BSC)よりも予後の改善が見込まれるため、二次治療の使用が裏付けられると考えられた。 ただし、これは小規模な試験1件に限られた結果であり、その確認のためにさらに研究を要する。また、5-フルオロウラシルという薬剤を含む古い化学療法よりも最近の化学療法の方が有効であり、単剤化学療法よりも併用化学療法の方が有効であり、標的薬(「スマートドラッグ」と呼ばれる、がん細胞を攻撃して正常細胞をほとんど傷つけない薬物)が従来の化学療法の有効性を高めることがわかった。総じて、効果が高くなるほど毒性も増えていた。

エビデンスの質

本レビューの主な結果は、中程度から高い質のエビデンスによるものである。エビデンスの質が低〜中程度と判断された例につき、その原因は一般に、主な結果の不一致(つまり、無増悪生存期間(二次治療の開始から癌が増悪するまでの期間)の結果が全生存期間(二次治療の開始から死因を問わず死亡に至るまでの期間)によって裏付けられなかった)か、分析対象となった患者数が少ないかであった。ただし、転移のある大腸癌に対する二次治療において、無増悪生存期間は今日、(癌関連だけではなく全死亡を含み、また正確な推定値を得るには長い追跡期間を要する)全生存期間の代替指標として信頼できるとみなされていることは銘記すべきである。ほとんどの臨床試験には、QOL(生活の質)に関する記述がなかった。このため、二次治療の全身療法がもたらす生命予後の改善と治療に関連する毒性のバランスを、正式に調べることができなかった。

著者の結論: 

全身療法によって、転移のあるCRCで一次治療が無効であった患者の生存期間が改善する。とりわけ、標的治療薬が従来の化学療法薬と併用された場合、生命予後が改善される。最適のレジメンは何か、また、それぞれのレジメンが最大の恩恵をもたらすのはどんな患者かを見定めるためには、さらなる研究が必要である。

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背景: 

転移のある大腸癌(CRC)で一次治療が奏効しなかった場合、患者の治療と対応に難渋する。

目的: 

転移のあるCRC患者に対する二次治療での全身療法の有効性と毒性を判定する。

検索方法: 

Cochrane Central Register of Controlled Trials (CENTRAL) (the Cochrane Library 2016, Issue 4)、Ovid MEDLINE (1950年から2016年5月)、Ovid MEDLINE In-process & Other Non-Indexed Citations (1946年から2016年5月) と Ovid Embase (1974年から2016年5月)を検索した。使用言語、出版日の制限は設けなかった。

選択基準: 

転移のある進行、再発、または一次治療の全身療法が無効のCRC患者に対する二次治療での全身療法(単剤または多剤併用療法で、抗癌剤の種類、用量、コース数は問わない)の有効性(生存期間、腫瘍反応)と毒性(重篤な有害事象(SAE)の発生率)を評価するランダム化比較試験(RCT)。

データ収集と分析: 

主要評価項目(生存期間)および副次的評価項目(腫瘍反応、毒性)につき、対象とした各RCTの記述的分析を実施した。選択した臨床試験で試された治療薬のレジメンが多様であったことから、(単一ではなく)分類を考慮した抗がん剤治療法のメタアナリシスを実施することができた。この目的で、データ収集に際しランダム効果モデルを採用した。関連の強さを記述するために、生存期間(全生存期間(OS)および無増悪生存期間(PFS))はハザード比(HR)を、二分値(全奏効率(ORR)およびSAE率)データはリスク比(RR)をそれぞれ用い、95%信頼区間(CI)を付した。

主な結果: 

34件のRCT(登録患者13,787例)が適格基準を満たした。 解析対象とした資料から、転移のあるCRC患者に対する二次治療全身療法の生存効果に関するいくつかの臨床的問題に答えることができた。
1. 化学療法(イリノテカン)は最良支持療法(BSC)よりも有効であった(OSのHR: 0.58、95% CI 0.43~0.80、RCT1件、中等度の質のエビデンス)。 2. 新しい化学療法(FOLFOX (5-フルオロウラシルとロイコボリンとオキサリプラチン併用)、イリノテカン)は古い化学療法(5-フルオロウラシル)よりも有効である(PFSのHR: 0.59、95%CI 0.49~0.73、RCT2件、高い質のエビデンス)(OSのHR: 0.69、95%CI 0.51~0.94、RCT1件、中等度の質のエビデンス)。3. イリノテカンの併用療法は、イリノテカン単剤よりも有効であった(PFSのHR: 0.68、95%CI 0.60~0.76、RCT6件、中等度の質のエビデンス)。4. 〔分子〕標的治療薬により、化学療法と併用した場合も(OSのHR: 0.84, 95%CI 0.77~0.91; RCT6件、高い質のエビデンス),ベバシズマブ単独で使用した場合も(PFSのHR: 0.67、95%CI 0.60~0.75、RCT4件、高い質のエビデンス)従来の化学療法よりも有効性が改善された。

副次的評価項目について、腫瘍反応率はおおむね生存期間の結果に合致した。さらに、抗癌作用が高ければ高いほど、治療関連毒性が高いという連関が見られた。ただし、ベバシズマブを含むレジメンは特筆すべき例外であり、化学療法に標的治療薬を上乗せしてもSAEの発生率は有意に上昇しなかった。最後に、オキサリプラチンを含むレジメンの治療を受けた患者において、(静注とは違い)経口フルオロピリミジンは、(有効性を下げることなく)有害事象の発生を有意に減少させることがわかった。

上記の大腸癌二次治療に関わるその他の論点については、結論が得られなかった。たとえば、治療の優劣順位(あり得るすべての対比が調べられた訳ではないうえ、多くの対比は小数の患者が組み込まれた単独試験に基づくものであった)や、生活の質〔QOL〕(事実上、利用できるデータなし)については結論が得られなかった。

訳注: 

《実施組織》一般社団法人 日本癌医療翻訳アソシエイツ(JAMT:ジャムティ)『海外癌医療情報リファレンス』(https://www.cancerit.jp/)盛井有美子  翻訳、畑 啓昭(国立病院機構 京都医療センター 外科)監訳 [2017.4.19] 《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクラン日本支部までご連絡ください。 なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review、Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。《CD006875》

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