低酸素性虚血性脳症新生児の死亡および罹病予防に対するアロプリノール

出生前、中、後に酸素が欠乏(周産期仮死)した新生児は、死亡または脳損傷のリスクが高い。動物モデルを用いた研究では、アロプリノール(痛風予防によく使用される薬)により周産期仮死後の脳損傷の程度を低下させると示唆されている。周産期仮死後の新生児へのアロプリノール投与により、そのアウトカムに影響があるか検討した3件の小規模なRCTを同定した。これらの試験のうち、効果があるというエビデンスを示したものはなかった。生存および機能障害への重大な効果を明確にする大規模な試験が必要である。

著者の結論: 

低酸素性虚血性脳症の新生児に対し、アロプリノールが臨床的に重要な利益を有するか確認する十分なデータを得られなかった。大規模な試験が必要である。そのような試験では、中等度から重度の脳症の乳児における低体温療法の補助法としてアロプリノールを評価し、死亡と長期の不良な神経発達アウトカムに対する重大な影響を排除するようデザインすべきである。

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背景: 

周産期低酸素傷害後の遅発性神経細胞死は、キサンチンオキシダーゼ媒介の細胞傷害性フリーラジカル産生が原因の一部となっている。キサンチンオキシダーゼ阻害薬のアロプリノールにより、周産期仮死の実験的モデルおよび臓器再潅流傷害の人での遅発性細胞死が減少するというエビデンスがある。

目的: 

低酸素性虚血性脳症新生児の死亡および罹病予防に対するアロプリノールの効果を検討すること。

検索戦略: 

Cochrane Neonatal Groupの標準的検索法を用いた。Cochrane Central Register of Controlled Trials(CENTRAL、コクラン・ライブラリ2012年第1号)、MEDLINE(1966~2012年3月)、EMBASE (1980~2012年3月)、CINAHL(1982~2012年3月)、学会抄録および過去のレビューを検索した。

選択基準: 

低酸素性虚血性脳症の新生児を対象に、アロプリノール投与をプラセボまたは無薬剤と比較しているランダム化比較試験(RCT)または準ランダム化比較試験。

データ収集と分析: 

Cochrane Neonatal Review Groupの標準的方法を用いてデータを抽出し、2名のレビューアが別々に試験の質とデータ抽出の評価を行った。

主な結果: 

参加総数114名の新生児を対象とした3件の試験を選択した。1件の試験では、重度の脳症の新生児だけが参加していた。他の試験は、軽度から中等度の重症度の脳症の新生児を組み入れていた。これらの研究の方法論的質は全般的に良好であったが、死亡および罹病に対するアロプリノールの臨床的に重要な効果を排除するにはかなり小規模であった。メタアナリシスでは、死亡リスク[リスク比0.88、95%信頼区間(CI)0.56~1.38;リスク差 -0.04、95%CI -0.18~0.10]、死亡または重度の神経発達障害の複合(リスク比0.78、95%CI 0.56~1.08;リスク差-0.14、95%CI -0.31~0.04)に統計学的有意差は示されなかった。

訳注: 

《実施組織》江藤宏美監訳 厚生労働省委託事業によりMindsが実施した。 [2012.11.14]
《注意》 この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクラン日本支部までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review、Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。
《CD006817》

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