頚椎椎間板変性疾患に対する中薬(中医学の薬草療法)

レビューの意義

頸椎の変形はきわめて多く発生し、重度の頸部痛、障害および生活の質の低下を引き起こす場合がある。頸椎変性疾患は、強い痛み、不安定症、神経根障害(腕の下から頭部にかけての痛み)、脊髄症(腕または手の痙直および脱力感、手の「麻痺とぎこちなさ」を含む場合がある)またはこれらすべてを引き起こす可能性がある。内用中薬および外用中薬が、さまざまな頸部の障害に用いられている。臨床試験が実施された中薬もある。

試験の説明

神経根障害の徴候や症状または脊髄症を有する慢性頸部痛の成人701名を対象とした3件のランダム化比較試験で2種類の内用中薬が検討された。内用中薬のうち1種類をMobicox(非ステロイド抗炎症薬)およびMethycobal(腕の麻痺およびチクチク感を軽減する薬)と比較し、他方の1種類(Compound Qishe Tablet)をプラセボおよびJingfukangと比較した。外用中薬(Compound Extractum Nucis Vomicae)をDiclofenac Diethylamine Emulgel(非ステロイド抗炎症薬)と比較した。

結果

内用中薬はプラセボおよびJingfukangと比較して頸部痛を軽減する可能性がある。外用中薬(Compound Extractum Nucis Vomicae)も頸部痛を短期間(4週間)改善したが、バイアスのリスクが高い試験であった。

研究上の限界

対象とした4件の研究はすべて中国で実施されており、このうち2件は未発表であった。試験の半数はバイアスのリスクが低かったが、短期間の効果のみを検討していた(最長8週間)。研究のサイズが小規模であった。十分な参加者数で、中薬の長期的な効果または有効性をプラセボと比較した試験が必要である。

結論

神経根の症状を有するまたは神経根の症状が認められない慢性頸部痛について、Compound Qishe Tabletがプラセボよりも疼痛緩和に有効であることを治療終了時に判定した質の低いエビデンスが得られている。しかし、研究のサイズが小規模で効果判定の期間が短かった。さらなる研究によって効果サイズおよび結果の信頼性が変化する可能性がきわめて高い。十分な参加者数で、中薬の長期的な効果または有効性をプラセボと比較した試験が必要である。

著者の結論: 

内用中薬Compound Qishe TabletがプラセボまたはJingfukangと比較して疼痛を緩和し、外用中薬Compound Extractum Nucis VomicaeがDiclofenac Diethylamine Emulgelと比較して疼痛を緩和するという質の低いエビデンスが得られた。さらなる研究によって効果サイズおよび結果の信頼性が変化する可能性がきわめて高い。

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背景: 

神経根の徴候または症状を伴う慢性頸部痛は一般的な疾患である。多数の患者が症状の緩和に中医学などの補完代替医療を使用している。

目的: 

神経根の徴候または症状を有する慢性頸部痛に対する中薬の効果を評価すること。

検索戦略: 

CENTRAL (The Cochrane Library 2009年3号)、MEDLINE、EMBASE、CINAHLおよびAMED (2009年10月1日〜)、the Chinese Biomedical Databaseならびに中薬に関連した日本および韓国のデータベース (1979年〜2007年)を電子的に検索した。文献内容の専門家への問合せおよび中国で出版されたいくつかの学術誌のハンドサーチを行った。

選択基準: 

適切な放射線所見で頸椎変性疾患、頸髄神経根障害または脊髄症の臨床診断を受けた成人を対象としたランダム化比較試験を組み入れた。介入は中薬とし、中薬の定義は、剤形を問わず医療目的で使用される植物、鉱物および動物(またはその一部)の未加工もしくは精製された製品とした。主要アウトカムは疼痛緩和とし、視覚的アナログ尺度、数値尺度または妥当性を確認した他のツールを用いて測定した。

データ収集と分析: 

2名のレビュー著者が事前に作成したフォームでそれぞれデータの抽出および記録を行った。Cochrane Back Review Groupが推奨する12種類の評価基準および5種類の調査票を用いて、2名のレビュー著者がバイアスのリスクおよび臨床的重要性をそれぞれ評価した。相違点は合意によって解決した。

主な結果: 

対象研究4件はすべて中国で実施されており、うち2件は未発表であった。効果サイズは臨床的に重要ではなく、研究の限界およびデータ量の少なさ(単一施設研究)が原因で、すべてのアウトカムについて質の低いエビデンスが得られた。2件の試験(参加者680名)では、Compound Qishe TabletsはプラセボまたはJingfukangと比較して短期的な疼痛緩和に有効であった。1件の試験(参加者60名)では、Huangqi( (Radix Astragali) 18 g、Dangshen (Radix Codonopsis) 9 g、Sanqi (Radix Notoginseng) 9 g、Chuanxiong (Rhizoma Chuanxiong) 12 g、Lujiao (Cornu Cervi Pantotrichum) 12 gおよびZhimu (Rhizoma Anemarrhenae) 12 g)は、MobicoxまたはMethycobalと比較して疼痛緩和に有効であった。1件の試験(参加者360名)では、外用中薬Compound Extractum Nucis VomicaeはDiclofenac Diethylamine Emulgel(ジクロフェナクジエチルアミンエマルジェル)と比較して疼痛緩和に有効であった。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2018.1.20]
《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 
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