うつ病に対するデュロキセチンと他の抗うつ薬との比較

薬理学的介入と心理学的介入の両方が大うつ病に有効ですが、中等度から重度の大うつ病の治療の中心は今でも抗うつ薬です。 ここ20年の間、より新しい化合物(選択的セロトニン再取り込み阻害薬やセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬などの二重作用の薬)が最もよく処方される抗うつ薬となっています。 デュロキセチン塩酸塩は最近市販された抗うつ薬の一つで、経口投与される選択的セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬です。 今回のレビューで、大うつ病の急性期治療における他のすべての抗うつ薬と比較したデュロキセチンの有効性、許容性および忍容性に関するエビデンスを評価しました。 16件のランダム化比較試験(RCT)(参加者5,735例)を選択しました。 大うつ病の急性期治療において、デュロキセチンはいくつかの他の新しい抗うつ薬に比べてより有効性が高いとは言えず、 研究の終了前に治療を中止した患者がエスシタロプラムとベンラファキシン投与患者に比べてデュロキセチン投与患者の方が多かったために、忍容性に劣っていました。 しかし、一つの比較について研究の数が限定的であったため、これらの結果の解釈には注意が必要です。

著者の結論: 

大うつ病の急性期治療に対し、他の抗うつ薬に比べてデュロキセチンの方が有効性に関し有意に優れているとは考えられなかった。 デュロキセチンは、有効性の点で差を認めなかったとはいうものの、 許容性および忍容性の点では一部のSSRI(特にエスシタロプラム)および新規抗うつ薬(ベンラファキシンなど)に比べて劣っていた。 残念なことに、デュロキセチンをごく少数の他の有効な抗うつ薬と比較しているエビデンスを認めただけであり、 一つの比較について少数の試験しか認めなかった(1件の試験しか認めなかった場合もあった)。 このため、本レビューでは薬剤間に中等度だが臨床的に意味のある差を検出する検出力に限界があった。 本レビューでは多数の統計学的検定が用いられていたため、本レビューの所見は仮説検証というより仮説形成と考えるべきであり、 今後の試験で結論が再現されることを期待したい。 選択した研究の大半は、デュロキセチン製造販売会社による支援を受けていた。 他のすべての新規治験化合物についてと同様に、スポンサーバイアスによる投与効果の過大評価の可能性を念頭に置くべきである。 今回のレビューで経済的アウトカムを報告した試験はなかった。 数種のSSRIと抗うつ薬の大多数が現在ジェネリック医薬品として市販されていることを考慮すると(エスシタロプラム、デスベンラファキシン、デュロキセチンがなお特許期間中)、 医療政策に適切に情報を付与するため、抗うつ薬投与による経済に対する包括的効果の推定を考慮すべきである。

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背景: 

薬理学的介入と心理学的介入の両方が大うつ病に有効であるが、一次および二次医療現場の治療の中心は抗うつ薬である。 抗うつ薬の中でも、多数の様々な薬剤が市販されている。 デュロキセチン塩酸塩はセロトニンとノルエピネフリンの二つの再取り込み阻害薬であり、大うつ病障害(MDD)、 全般性不安障害、糖尿病性末梢神経障害性疼痛、線維筋痛症、慢性の筋骨格痛に対してFDA(米国食品医薬品局)による承認を受けている。

目的: 

大うつ病の急性期治療を対象に、他のすべての抗うつ薬と比較したデュロキセチンの有効性、許容性および忍容性に関するエビデンスを評価すること。

検索戦略: 

MEDLINE(1966~2012年)、EMBASE(1974~2012年)、Cochrane Collaboration Depression, Anxiety and Neurosis Controlled Trials Register、 Cochrane Central Register of Controlled Trials(~2012年3月)。 言語による制約は設けなかった。関連性のある論文および以前のシステマティックレビューの参考文献リストをハンドサーチした。 追加データについてデュロキセチンを販売している製薬会社および本分野の専門家に連絡を取った。

選択基準: 

大うつ病患者を、デュロキセチンまたは他の抗うつ薬に割り付けているランダム化比較試験(RCT)。

データ収集と分析: 

2名のレビューアが別々にデータを抽出し、複記式方法を採用した。 抽出した情報は、研究の特性、参加者背景、介入の詳細、および有効性、許容性、忍容性というアウトカム指標であった。

主な結果: 

総計16件のRCT(参加者総数5,735例)を本システマティックレビューに選択した。これらのうち、3件は未発表試験であった。 デュロキセチンを一つの選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)と比較している11件(パロキセチン6件、エスシタロプラム3件、フルオキセチン2件)の研究(参加者総数3,304例)、 新規抗うつ薬と比較している4件(ベンラファキシン3件、デスベンラファキシン1件)(参加者総数1,978例)、 抗うつ薬としても使用される抗精神病薬クエチアピンと比較している1件(参加者総数453例)の研究を認めた。 デュロキセチンを三環系抗うつ薬と比較した研究は認められなかった。 プールした信頼区間はやや広く、デュロキセチンを他の抗うつ薬と比べた場合有効性に統計学的に有意である差はなかった。 しかし、エスシタロプラムまたはベンラファキシンと比較した場合、 デュロキセチンにランダム化された患者で、理由を問わない脱落が高率であった[それぞれ、オッズ比(OR)1.62、95%信頼区間(CI)1.01~2.62;OR 1.56、95%CI 1.14~2.15]。 パロキセチン投与患者に比べてデュロキセチン投与患者において、有害事象が多い事を示唆する、弱いエビデンスが認められた(OR 1.24、95%CI 0.99~1.55)。

訳注: 

監  訳: 三浦 智史,2013.2.19

実施組織: 厚生労働省委託事業によりMindsが実施した。

ご注意 : この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、Minds事務局までご連絡ください。Mindsでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、編集作業に伴うタイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。

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