行動異常のある認知症の人のためのスペシャルケア・ユニット

著者の結論: 

認知症に伴う行動上の症状に及ぼすSCU効果を検討したRCTは同定されなかった。利用可能な非RCTからは、有益であるとする強固なエビデンスは検出されなかった。おそらく、特別な介護環境を提供するよりも、最良の介護を実践する方が重要であると思われる。行動、拘束、向精神薬の使用に関するデータを複数の養護老人ホームからルーチンに収集することにより、SCUが有用か否かに関する正式で最善な評価法が得られるだろう。

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背景: 

認知症の人にみられる行動異常は、ケアに際して一番やっかいな問題のひとつであるとしばしば考えられている。1980年代以降、認知症患者、通常アルツハイマー病患者のケアをする目的として、特に行動異常のある患者に対してはスペシャルケア・ユニット(SCU)が流行している。標準的定義はないもののSCUは通常、養護老人ホーム内に設置されており、一般的な特徴として、熟達した職員の配置、特別なプログラム、工夫された物理的環境、家族の積極的関与などから成り立っている。SCUの費用は一般に「標準的」養護老人ホームで受ける介護よりも高い。にもかかわらずSCUのアウトカムへの評価は相反する結果となっていた。それゆえ、このエビデンスのシステマティック・レビューが必要となったのである。

目的: 

認知症の患者を対象に、行動異常、気分、身体拘束の有無、向精神薬療法に及ぼすSCU効果を評価する。

検索戦略: 

検索語「Special Care Units」または「SCU」を用いて、Specialized Register of the Cochrane Dementia and Cognitive Improvement Group(CDCIG)、コクラン・ライブラリ、MEDLINE、EMBASE、PsycINFOおよびCINAHLを2007年9月6日に検索し、試験を同定した。CDCIG Specialized Registerには、MEDLINE、EMBASE、CINAHL、PsycINFO、CENTRAL、およびLILACSなどの主要な医療データベース、ならびに多数の進行中の試験のデータベースおよび灰色文献情報源からの記録が含まれる。

選択基準: 

SCUのアウトカムを伝統的な看護設備(養護老人ホーム、高度看護施設)と比較したすべてのランダム化比較試験(RCT)を含めた。

データ収集と分析: 

2名のレビューアが独立に適格と見込まれる研究の報告全文を読み、選択基準に適合する研究を選択した。不一致があれば2名のレビューアで議論して解決した。必要な場合は、第3者の意見を参考にして最終的合意に達した。

主な結果: 

選択基準に適合したRCTは同定されなかった。倫理的および実際上の理由によりSCUのRCTが実施される見込みはないため、同じプロトコルと基準を用いて非RCTに関するシステマティック・レビューを実施した。選択基準を満たした非RCTが8件あった。そのうち、メタアナリシスで統合するのに抽出可能なデータが存在したのは4件のみであった。これらの非RCTにおいて比較群間における相違、例えば認知症の重症度の差などが適切に調整されていなかった。これはSCUへのほぼすべての肯定的アウトカムがそこに由来する、ある試験でも同様であった(Nobili、2006)。6ヶ月時の「身体拘束あり」で、2件の研究があった。アウトカムの結果はすべて単一の研究からのものにすぎず、例外は先の研究で、SCUを有効とする総NeuropsychiatricInventoryスコアが6ヵ月、12ヵ月、18ヵ月時点でわずかに改善していた。身体拘束の使用については、SCUの方が6ヵ月および12ヵ月時点で少なかった(それぞれOR=0.46(95%CI 0.27~0.80)、p=0.006、およびOR=0.49(0.27~0.88)、p=0.02)。SCUの患者は、伝統的な養護老人ホームの患者よりも3ヵ月時点でうつ病が少なかった(コーネルポイント、重み付け平均差-6.30(-7.88~-4.72)、p<0.00001)。コントロール群を有利とする観察所見が1件だけあった。具体的には、6ヵ月の時点の向精神薬使用の平均数については伝統的な養護老人ホームの方が良好であり、わずかではあるが有意な効果が認められた(重み付け平均差0.20、CI0.00~0.40、z=1.96、P=0.05)。

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