3歳までの小児の急性細気管支炎に対する蒸気吸入または加湿酸素

細気管支炎は、3歳までの乳幼児においてよくみられる呼吸器感染症である。一般的にRSウイルスが原因である。細気管支炎の小児には、咳、速い呼吸および呼吸困難、鼻腔閉塞感、発熱、喘鳴が認められる。この疾患は、薬剤(気管支拡張剤および副腎皮質ホルモン剤)および加湿した空気を用いて治療する。

蒸気吸入またはミストのような加湿した空気は、患者の気道分泌物を軽減し、呼吸困難の症状を緩和するのに役立つと考えられている。3歳未満の小児におけるこのような感染症の症状を緩和するための、加湿した空気単独または薬剤との併用療法を用いた試験を検索し、レビューした。解析のための基準を満たした試験を1件のみ(小児156名)発見した。本試験では、サルブタモールのネブライザー吸入とテント内でのミスト(加湿した空気)とを比較した。本結果により、サルブタモールのネブライザー吸入は、乳幼児の急性細気管支炎の呼吸困難を緩和するのに有効であるが、ミスト療法には効果がないことが示された。本試験では、どちらの介入に対しても有害作用に関する報告はなかった。本試験の質は高かったが、さまざまな治療群への患者の割り付けに関するいくつかの問題については、あまり満足のいくものではなかった。現在のところ、細気管支炎の乳幼児に対し、蒸気吸入またはミストが有用であると述べるのに十分なエビデンスはない。急性細気管支炎に対する加湿酸素、ミスト療法または蒸気吸入の有効性とその他の治療とを比較した、より適切に設計された試験が必要である。

著者の結論: 

資源が限られている環境では、急性細気管支炎の治療に対し、一般的に蒸気吸入(または低温ミスト療法)が使用される。1件の試験が組み入れに適格で、細気管支炎の乳幼児に対し、サルブタモール<Bold><Bold></Bold></Bold>のネブライザー吸入が有効な介入であることが明らかになったが、テント内でのミストでは、RDSスコアは有意に減少しなかった。解析されたのは1件の試験のみであったため、細気管支炎の小児に対し、ミスト療法は効果がないと結論するのは誤解を招く可能性がある。3歳までの小児の急性細気管支炎に対する、蒸気吸入またはミスト療法の使用に関する治療情報を提供するにはエビデンスが不足していると結論する。

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背景: 

急性細気管支炎は、乳幼児でよくみられる呼吸器感染症であり、主な疾病原因である。気管支拡張剤(例、サルブタモール)、副腎皮質ホルモン剤または加湿した空気(蒸気吸入、低温ミスト)で治療する。蒸気吸入は、安価で入手しやすいため、低所得国で好まれている。気道での分泌を軽減し、呼吸困難を緩和するための粘液溶解薬として作用すると考えられている。

目的: 

3歳までの急性細気管支炎の小児に対する、呼吸困難を緩和するための蒸気吸入または加湿酸素の有効性および有害事象を評価すること。

検索戦略: 

Acute Respiratory Infections Group's Specialised Registerを含むCochrane Central Register of Controlled Trials (CENTRAL)(コクラン・ライブラリ 2010年、第1号)、MEDLINE(1950~2010年2月第4週)、EMBASE.com(1974~2010年3月)、CINAHL(1981~2010年3月)、AMED(1985~2010年3月)、Web of Science(2000~2010年3月)およびLILACS(1982~2010年3月)を検索した。

選択基準: 

3歳までの細気管支炎の小児を対象に、蒸気吸入(もしくは低温ミスト)または加湿酸素と、気管支拡張剤、副腎皮質ホルモン剤またはプラセボの、単独または併用療法とを比較したランダム化比較試験。

データ収集と分析: 

2名のレビュー著者がそれぞれ試験の質を評価し、データを抽出した。

主な結果: 

組み入れに対する適格基準を満たした試験は1件(細気管支炎の徴候および症状がある生後7週から24カ月の小児156名)のみであった。参加者は、サルブタモールのネブライザー吸入、生理食塩水のネブライザー吸入およびテント内でのミストの3つのグループにランダム化された。本結果により、サルブタモールのネブライザー吸入群で、呼吸困難症状(RDS)スコアの有意な減少が示されたが、テント内でのミストまたは生理食塩水群のネブライザー吸入では、RDSスコアの有意な減少は示されなかった。本試験では、介入の有害作用に関する報告はなかった。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2018.2.27]
《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。
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