風邪に対するガーリック

背景

ガーリックは、風邪に対して有益であると広く考えられている。この考え方は、伝統的な使用法、ガーリックには抗菌作用や抗ウイルス作用があるという研究のエビデンスに基づいている。平均すると、成人は1年に2~4回風邪に罹患する。

研究の特性

本エビデンスは2014年8月7日現在のものである。特定した試験8件のうち、1試験のみがレビューの基準を満たしていた。この試験では、3カ月に渡って146名の参加者を評価した。この期間、参加者の半数にプラセボ、残りの半数にガーリック錠を摂取させた。参加者には、風邪の症状が現れたときに日記に記載させた。

主な結果

選択した試験では、3カ月間毎日(プラセボの代わりに)ガーリックを摂取した参加者の方が、風邪を引く頻度が少なかった。具体的には、3カ月間での風邪の発症件数は、ガーリック群で24件、プラセボ群では65件であった。参加者が風邪を引いていた期間は、両群で同程度であった(4.63日に対して5.63日)。

エビデンスの質

プラセボ群(1名)よりもガーリック群(4名)で、おくびに伴う匂いに気がつく参加者が多かったことから、参加者の盲検化が十分ではなかった可能性がある。しかし、その他に考えられるバイアスは、十分にコントロールされていた。唯一選択された試験は、今回のレビューの目的に直接関連していた。この試験は小規模であったが、正確かつ信頼のある結果を導くには十分な参加者の数であった。結果が選択的に報告されたことを示すエビデンスは認められない。しかし、このことは、アウトカムが予め決定されていたようではないと考えられる。肯定的な試験結果を導くためにサプリメント会社が報奨金を出していた場合、ガーリックに効果がないことを示す試験は公表しない可能性もある。全般的に、エビデンスの質は中程度である。

副作用

この小規模な試験で起こった可能性のある副作用は、臭気および発疹であった。ガーリックについて起こる可能性のある副作用に関しては、更なる情報が必要である。

著者の結論: 

風邪を予防または治療する上でのガーリックの効果に関して、臨床試験でのエビデンスは不十分である。1件の試験で、ガーリックが風邪発症を予防する可能性が示唆されたが、この結果を立証するには更なる試験が必要である。有効性の結論は、不十分な質のエビデンスに大きく依存しているようである。

アブストラクト全文を読む
背景: 

ガーリックには、風邪を緩和させる抗菌作用および抗ウイルス作用があり、特に有益な作用があるとされている。ガーリック・サプリメントは広く使用されている。風邪は、かなりの罹患率および経済的影響を伴う。平均すると、小児は1年につき6~8回、成人は2~4回風邪に罹患する。

目的: 

プラセボ、無治療または他の治療と比較して、ガーリックが風邪の予防または治療に有効であるかどうかを検証すること。

検索戦略: 

CENTRAL(2014年第7号)、OLDMEDLINE(1950~1965年)、MEDLINE(1966年1月~2014年7月第5週)、EMBASE(1974年~2014年8月)およびAMED(1985年~2014年8月)を検索した。

選択基準: 

ガーリックとプラセボ、無治療または標準的治療を比較した風邪の予防および治療に関するランダム化比較試験。

データ収集と分析: 

2名のレビュー著者がそれぞれ、検索対象から試験をレビューおよび選択し、試験の質を評価および査定し、関連するデータを抽出した。

主な結果: 

この最新レビューでは、検索対象から関連すると考えられる試験を8件特定した。1件の試験のみが選択基準に適合した。この試験では、12週間ガーリック・サプリメントを摂取させる群(アリシンを含有する180 mg)またはプラセボ(1日1回)を摂取させる群に参加者146名を割り付けた。試験によると、ガーリック摂取群では風邪が24件認められたのに対し、プラセボ摂取群では65件であり(P値<0.001)、プラセボ群と比較してガーリック群の方が罹病日数が少なくなった(111日に対して366日)。風邪発症から回復までの日数は、両群で同程度であった(4.63日に対して5.63日)。選択基準に適合していたのは1件の試験のみであったため、結論は限定的である。この試験は、風邪発症について自己報告式であったが、ランダム化および割り付けの観点で妥当な質であった。有害作用は、発疹および臭気であった。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2015.12.31]
《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。

Tools
Information