緑内障患者への治療としての鍼治療

緑内障では、視神経が障害され、主に左右の視野が影響を受ける状態である。世界中で失明の主な原因となっている。点眼液、レーザー治療や手術など多くの治療法があるが、定期的な治療に加えて鍼治療などの補完的又は代替的な医療を求める患者もいる。本レビューの目的は、緑内障患者を治療する上で鍼治療が有益かつ安全であるかを評価するランダム化比較試験の結果のエビデンスを検証することであった。本レビューでは、終了済みの試験を1件および継続中の試験を1件選択し、適格性について評価待ちの試験を7件(すべて中国語で公表)登録した。終了済みの試験は、33名の患者を対象に台湾で行われた。この試験では、緑内障に対する耳鍼治療(標準的ではない鍼治療)と偽の治療(本物の治療に似せた治療)とを比較していた。試験では、8週間のフォローアップ期間に眼圧および視力を測定した。この試験の質は高くなかった。この試験の結果によると、耳鍼治療により眼圧が4週目に右眼で約4 mmHgおよび左眼で約5 mmHg低下したが、その他の時点や眼に関するその他の転帰について有意な効果は認められなかった。鍼治療の安全性については、この試験では検証されていなかった。現時点で、継続中の「緑内障に対する鍼治療」試験に参加者はいない。現在入手しているエビデンスに基づくと、緑内障に対する治療としての鍼治療の有益性および有害性は確定できない。適格性について評価を待っている中国の7試験を今後含めれば、結論が変わる可能性がある。

著者の結論: 

現時点で、緑内障の治療に鍼治療を行うことを支持する上で、入手したデータから信頼のある結論を出すことはできない。倫理的な問題のため、鍼治療のみと緑内障の標準的な治療法やプラセボとを比較するRCTは、標準的治療がすでに確立している国で正当化される可能性は低い。眼科医による治療を受けている大半の緑内障患者は、非伝統的な治療を受けないため、診療方針の決定は、文献にデータがない場合、医師の判断や患者の好みに委ねられることとなる。このレビューを今後アップデートする際に中国の7試験を含める場合、結論が変わる可能性がある。

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背景: 

緑内障は、多因子性視神経症であり、年齢相応の視神経の消失や萎縮を超えるような網膜神経節細胞の後天性消失を特徴とする。緑内障を管理するために多くの治療があるが、緑内障は慢性的である。定期的な治療に加えて鍼治療などの補完的又は代替的な医療を求める患者もいる。鍼治療の根本は、気(生命力やエネルギーとして訳される伝統的な中国の概念)の流れに関連性のある障害は体表の関連するつぼを刺激することで予防又は治療できるという概念である。

目的: 

本レビューの目的は、緑内障患者における鍼治療の有効性および安全性を評価することとした。

検索戦略: 

Cochrane Central Register of Controlled Trials(CENTRAL)(Cochrane EyesおよびVision Group Trials Registerを含む)(Cochrane Library、2012年、第12号)、Ovid MEDLINE、Ovid MEDLINE In-Process and Other Non-Indexed Citations、Ovid MEDLINE Daily、Ovid OLDMEDLINE(1946年1月~2013年1月)、EMBASE(1980年1月~2013年1月)、Latin American and Caribbean Literature on Health Sciences(LILACS)(1982年1月~2013年1月)、Cumulative Index to Nursing and Allied Health Literature(CINAHL)(1937年1月~2013年1月)、ZETOC(1993年1月~2013年1月)、Allied and Complementary Medicine Database(AMED)(1985年1月~2013年1月)、meta Register of Controlled Trials(m RCT)( www.controlled-trials.com)、ClinicalTrials.gov(www.clinicaltrials.gov)、WHO International Clinical Trials Registry Platform(IC- TRP)(www.who.int/ictrp/search/en)およびNational Center for Complementary and Alternative Medicineウェブサイト(NCCAM)(http:/nccam.nih.gov)を検索した。 試験の検索に言語やデータの制限は設けなかった。 電子的データベースの最終検索日は2013年1月8日とした。ただし、NCCAMについては最終検索日を2010年7月14日とした。また、2007年4月にPeking Union Medical College Libraryにて中国の医学雑誌を手動で検索した。

初回のレビューの際には、Chinese Acupuncture Trials Register、Traditional Chinese Medical Literature Analysis and Retrieval System(TCMLARS)およびChinese Biological Database(CBM)を検索したが、2013年のレビューのアップデートではこれらのデータベースは検索しなかった。

選択基準: 

研究の1群を鍼治療にしたランダム化比較試験(RCT)を選択した。

データ収集と分析: 

2名の著者が独立して、適格基準について検索結果および論文全体を評価した。話し合いにより矛盾点を解決した。

主な結果: 

終了済みの試験を1件および継続中の試験を1件選択し、適格性について評価待ちの試験を7件登録した。これらの7試験は中国語で記されており、中国の雑誌に公表された同じトピックに関するシステマティックレビューから特定した。 終了済みの試験では、緑内障に対する耳鍼治療(標準的ではない鍼治療)と偽の治療とを比較していた。この試験は、転帰評価者の隠蔽についてバイアスのリスクが高い、選択的な転帰報告についてバイアスのリスクが不明、その他のドメインについてバイアスのリスクが低いと評価した。鍼治療群における眼圧(mm Hgで表示)の差は、4週目において偽治療群よりも有意に減少したが(右目-3.70、95%信頼区間[CI]-7.11~-0.29;左目-4.90、95%CI -8.08~-1.72)、最も長いフォローアップ時点である8週目を含むその他のフォローアップ時点で統計学的な差は認められなかった。あらゆるフォローアップ時点において、視力に関する統計学的有意差は認められなかった継続中の試験は、世界保健機関のInternational Clinical Trials Registry Platform(ICTRP)と共に登録されていた。現時点で、この試験への参加者はいなかった。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2015.12.31]
《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。

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