2型糖尿病に対する長時間作用型インスリンアナログとNPHインスリン(ヒトイソフェンインスリン)との比較

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著者の結論: 

今回の解析から、症候性の夜間低血糖イベントに関して「基本的」インスリンを投与された2型糖尿病患者に対する長時間作用型インスリンアナログ投与の臨床上の利益はあったとしても僅かであることが示唆される。長期間の有効性データおよび安全性データが入手できるまで、インスリングラルギンまたはデテミルによる治療は慎重であることを提言する。

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背景: 

血糖値が高ければ高いほど、微小血管および大血管の合併症の発現リスクが高くなることが疫学研究から示唆されているにもかかわらず、2型糖尿病患者に対する抗高血糖療法の有益効果についてのエビデンスは相反している。2件の大規模な研究のUnited Kingdom Prospective Diabetes Study(UKPDS)とUniversity Group Diabetes Program(UGDP)では、代謝コントロールの改善を通しての心血管エンドポイントの低下は認められなかった。新しいインスリンアナログの理論上の利益は、大血管および微小血管のイベントが少なくなるようである。

目的: 

2型糖尿病患者に対する長時間作用型インスリンアナログ(インスリングラルギンおよびインスリンデテミル)の長期投与効果をNPHインスリンと比較評価する。

検索戦略: 

MEDLINE、EMBASE、コクラン・ライブラリをコンピュータ検索し、当該分野の専門家およびインスリンの製造業者に問い合わせた。

選択基準: 

2型糖尿病成人患者を対象としたランダム化比較試験であり、かつ試験期間が最低24週間である場合にその研究を選択した。

データ収集と分析: 

2名のレビューアが別々に試験の質を評価し、データを抽出した。ランダム効果モデルによるメタアナリシスによって研究の統合を行った。

主な結果: 

インスリングラルギンとNPH(Neutral Protamine Hagedorn)インスリンを比較した研究6件およびインスリンデテミルとNPHインスリンを比較した研究2件を同定した。これらの試験において、患者1715例がインスリングラルギンにランダム化され、患者578例がインスリンデテミルにランダム化された。選択した試験の試験期間の範囲は24~52週間であった。サロゲートエンドポイントとして糖化ヘモグロビンA1c(HbA1c)により評価された代謝コントロールおよび有害作用は、臨床に関連した方法において治療群の間で差はなかった。重度の低血糖率については、いずれの試験においても統計学的有意差は示されなかったが、症候性低血糖、総低血糖および夜間低血糖の発現率はインスリングラルギンまたはデテミルのいずれかを投与された患者で統計学的に有意に低かった。死亡率、罹病率、生活の質,費用などの患者志向型アウトカムに対する長時間作用型アナログの有益効果を示すエビデンスは得られなかった。