アルツハイマー病に対するヒューペルジンA

著者の結論: 

入手可能なエビデンスから、ヒューペルジンAにはAD患者の全般的な認知機能、全体的な臨床状態、行動障害および機能的能力の改善に有益な効果がいくらかあり、明らかな重篤な有害事象はないとみられる。しかし、質および規模が十分な研究は1件のみであった。従って、本薬剤の使用について何らかの推奨を行うためにはエビデンスが不十分である。効果をさらに評価するために、ADに対するヒューペルジンAに関する厳密なデザインのランダム化多施設共同大規模試験が必要である。

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背景: 

アルツハイマー病(AD)は、有病割合の増加、長期にわたる罹病期間、介護者の負担、および高い介護費用のため、世界中で公衆衛生上の主要な問題になっている。前脳基底部のアセチルコリン含有神経細胞の変性がADの症状に関係していることが示唆されている。コリンエステラーゼ阻害薬はアセチルコリンの分解を阻害し、これにより残存するコリン作動性神経の効力を増加する可能性がある。ヒューペルジンAは、アセチルコリンエステラーゼと線形的に競合する可逆的阻害薬であり、中枢性および末梢性の活性を有し、過酸化水素、βアミロイド蛋白(またはペプチド)、グルタミン酸、虚血ならびにスタウロスポリン誘発性の細胞毒性およびアポトーシスから細胞を保護する能力があると言われている。これらの特性により、ヒューペルジンAは、認知症(ADを含む)の治療に有望な薬剤ととなり得る可能性がある。

目的: 

AD患者の治療に対するヒューペルジンAの有効性および安全性を評価すること。

検索方法: 

2006年2月1日に、ヒューペルジン*という用語を用いて、Specialized Register of the Cochrane Dementia and Cognitive Improvement Groupを検索した。CDCIG Specialized registerは、あらゆる主要な医療データベース(MEDLINE、EMBASE、PsycINFO、CINAHL、SIGLE、ISTP、INSIDE、LILACS)ならびに多数の試験データベースおよび各種の文献情報源からの記録を含んでいる。さらに、CBMおよびAMEDのデータベースならびに関連性のあるウェブサイトを検索し、数種の雑誌をハンドサーチした。未発表の資料について当該分野の専門家に問い合わせ、見つかった資料を検索して参考文献に追加した。

選択基準: 

ADに対するヒューペルジンAの有効性および安全性を調べた関連性のあるすべてのランダム化比較試験(RCT)。

データ収集と分析: 

2名のレビューアが各自で作成したデータ抽出様式を用いて独自にデータを抽出し、RevMan4.2.10ソフトウェアに入力した。2件以上の試験から、十分に類似した患者について比較可能なアウトカムに関するデータが得られる場合に、メタアナリシスを行った。結果間に異質性が存在するとみられた場合には、ランダム効果モデルで分析した。用いられている尺度および治療期間が異なるため、平均アウトカム指標の標準化差を用いた。

主な結果: 

計454例の患者を組み入れた6件の試験が我々の選択基準に合致した。選択したほとんどの試験の方法論の質は高くなかった。プラセボと比較して、ヒューペルジンAには、MMSE(WMD2.81;95% CI 1.87~3.76;P<0.00001)ならびに6週目のADAS-Cog(WMD1.91;95% CI 1.27~2.55)および12週目のADAS-Cog(WMD2.51;95% CI 1.74~3.28)で測定した全般的な認知機能、CDR(WMD-0.80;95% CI -0.95~-0.65)およびCIBIC-plus(OR4.32、95% CI 2.37~7.90)で測定した全体的な臨床評価、6週目のADAS-non-Cog(WMD-1.33、95% CI -2.12~-0.54)および12週目のADAS-non-Cog(WMD-1.52、95% CI -2.39~-0.65)で測定した行動障害、ならびにADL(WMD=-7.17;95% CI -9.13~-5.22;P<0.00001)で測定した機能的能力の改善に有益な効果があることが示された。しかし、長谷川式認知症スケール(HDS)(WMD:2.78;95% CI -0.17~5.73、P=0.06)で測定した全般的な認知機能およびWeshler Memory Scale(WMS)(WMD=6.64;95% CI -3.22~16.50;P=0.19)で測定した特定の認知機能の改善について、ヒューペルジンAはプラセボよりも優れていなかった。生活の質および介護者の負担に関するデータは入手できなかった。ヒューペルジンAの有害事象は軽度であり、ヒューペルジンA群とコントロール群との間で有害事象に有意差はなかった。

訳注: 

監  訳: 江川 賢一,2008.7.12

実施組織: 厚生労働省委託事業によりMindsが実施した。

ご注意 : この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、Minds事務局までご連絡ください。Mindsでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、編集作業に伴うタイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。

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