2型糖尿病患者における心血管系疾患予防に対するアデノシン二リン酸(ADP)受容体拮抗薬

2型糖尿病患者では、一般の人に比べて脳卒中や心臓発作を起こす危険性が非常に高くなっています。脳卒中や心臓発作のほとんどは、血液の塊によって起こります。アデノシン二リン酸(ADP)受容体拮抗薬は血小板の凝集(「かたまり」)を防いで血液の塊ができないようにする薬です。これらの薬は、心臓発作や脳卒中などの心血管系疾患の予防のため、一般の人々で使用されています。このレビューでは、これらの薬が糖尿病患者で有用かどうかを評価しました。患者21,379名の8件の試験を選択し、試験の平均追跡期間は365~913日でした。糖尿病患者に特定した完全なデータはこれらの試験のうち1件からのみ得られ、部分的なデータは2件の試験から得られました。得られたデータの解析によると、理由を問わない死亡、心血管系疾患に関連した死亡、および心臓発作や脳卒中について、アデノシン二リン酸受容体拮抗薬(クロピドグレル、プラスグレル、チカグレロル、チクロピジンなど)は他の血液を薄める薬やプラセボより有効というわけではありませんでした。糖尿病患者に特定した、アデノシン二リン酸受容体拮抗薬の健康関連QOL、有害作用に対する効果、あるいは費用についての情報は得られませんでした。糖尿病患者でのアデノシン二リン酸受容体拮抗薬の使用について、糖尿病患者と非糖尿病患者を組み入れている試験から得られる情報を指針とする必要があります。エビデンスに基づく臨床ガイドラインを報告するため、アデノシン二リン酸受容体拮抗薬に関する今後のすべての試験では、特に糖尿病患者に関連するデータを組み入れるべきです。

著者の結論: 

糖尿病患者でのADP受容体拮抗薬に関する入手可能なエビデンスは限定的であり、大半の試験では糖尿病患者のアウトカムは別個に報告されていなかった。したがって、糖尿病患者でのCVD予防に対するADP受容体拮抗薬の使用に関する推奨は、糖尿病患者と非糖尿病患者を組み入れている試験から得られたエビデンスに基づいている。糖尿病患者での臨床管理の指針となる頑健なエビデンスを提供するため、糖尿病患者の試験、および統合した集団を有する試験での糖尿病患者のサブグループ解析が必要である。

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背景: 

心血管系疾患(CVD)は2型糖尿病で最も多い合併症であり、2型糖尿病の人の65%が粥状硬化症に関連した原因により死亡すると推定されている。クロピドグレル、チクロピジン、プラスグレルおよびチカグレロルのようなアデノシン二リン酸(ADP)受容体拮抗薬は、血小板凝集およびフィブリノゲン媒介性の血小板架橋を阻害し、CVD予防に有効である可能性がある。

目的: 

2型糖尿病における心血管系疾患予防に対するアデノシン二リン酸(ADP)受容体拮抗薬の効果を評価すること。

検索戦略: 

コクラン・ライブラリ(2011年第2号)中のCochrane Central Register of Controlled Trials(CENTRAL)、MEDLINE(~2011年4月)およびEMBASE(~2011年5月)を検索した。また、原著および関連性のあるレビューの参考文献をチェックするハンドサーチを行い、その後追加された研究を同定した。

選択基準: 

糖尿病患者を対象に12ヵ月以上ADP受容体拮抗薬を別の抗血小板薬またはプラセボと比較しているランダム化比較試験(RCT)。特に、臨床的心血管系アウトカムを評価している試験を検索した。

データ収集と分析: 

2名のレビューアが、標準的データ抽出テンプレートを用いて選択基準を満たした研究からデータを抽出した。選択した全研究の主任研究者から、その後追加された未発表情報およびデータを求めた。

主な結果: 

総計21,379名の糖尿病患者を対象とした8件の研究を選択した。選択した3件の研究では、アスピリンまたはプラセボと比較したチクロピジンを検討していた。選択した5件の研究では、アスピリンまたはアスピリンとジピリダモールの併用とクロピドグレルを比較し、あるいはアスピリン併用のクロピドグレルをアスピリン単独と比較していた。複数の冠動脈疾患リスク因子を有する患者を組み入れたCHARISMA試験を除いて、すべての試験はCVD歴のある患者を組み入れていた。試験の全体的なバイアスのリスクは低かった。平均追跡期間は365~913日であった。 糖尿病患者での全死亡率、血管系死亡率、および心筋梗塞に関するデータは、1件の試験(患者355名)でのみ入手可能であった。本試験はチクロピジンをプラセボと比較し、全死亡率、血管系死亡率および心筋梗塞について統計学的に有意である差は示されなかった。脳卒中に対する糖尿病アウトカムは3件の試験(総糖尿病参加者のうち31%)で入手可能であった。2件の研究(統計学的に異質)の全体統合では、ADP受容体拮抗薬と他の抗血小板薬との比較において、致死的および非致死的脳卒中の複合について統計学的に有意な減少は示されなかった[359/3,194(11.2%)対356/3,146(11.3%)、ランダム効果オッズ比(OR)0.81、95%信頼区間(CI)0.44~1.49]。糖尿病患者に特定した末梢血管疾患、健康関連QOL、有害事象、または費用に関するデータを入手できた試験はなかった。

訳注: 

監  訳: 相原 守夫,2014.1.28

実施組織: 厚生労働省委託事業によりMindsが実施した。

ご注意 : この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、Minds事務局までご連絡ください。Mindsでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、編集作業に伴うタイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。

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