ホルモン抵抗性前立腺癌に対する化学療法

著者の結論: 

HRPC患者には治療に関連した毒性と不良な反応のために、慣例的には、ルーチンの治療として化学療法は提案されていなかった。最近のランダム化研究のデータ、特にドセタキセルを用いたものは、全生存率の改善、症状緩和、生活の質の改善に期待が持てる改善を示した。HRPC患者の治療選択肢として化学療法を検討すべきである。しかしながら患者は、化学療法のリスクと利益に基づく説明を受けて決定すべきである。

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背景: 

前立腺癌に冒されるのは主として高齢男性で、その発生率はここ10年にわたり確実に増加している。本疾患の管理には論議が多い。進行した転移性前立腺癌の男性において、ホルモン療法は最初の治療としてほぼ例外なく受け入れられており、ほとんどの患者に良好な反応がみられる。しかしながら、多くの患者は再発し、さらなるホルモン療法に対して抵抗性がおこる。このような患者の予後は不良である。多くの患者は疾患が骨に及び、重度の疼痛を伴う。このような患者に対する治療には化学療法、ビスホスホネート、緩和放射線療法、ラジオアイソトープがある。ホルモン抵抗性前立腺癌(HRPC)の男性において全身化学療法の評価が何年間も行われたが、結果は期待はずれであった。しかしながら、さらに最近の新しい薬による研究は期待が持てる結果を示している。従って本疾患における化学療法の価値を探求する必要がある。

目的: 

本レビューは、転移性HRPC男性における化学療法の役割を評価することを目的とする。主要アウトカムは全生存率であった。副次的目的は、化学療法の疼痛軽減効果、前立腺特異抗原(PSA)反応、生活の質、治療に関連した毒性であった。

検索戦略: 

試験はMEDLINEなどの電子データベースの検索と、関連した論文と学会議事録のハンドサーチにより同定した。言語も地域も制限しなかった。

選択基準: 

HRPC患者において化学療法に関して発表されているランダム化試験のみを、本レビューに含める適格対象とした。本レビューに妥当であったのは、さまざまな化学療法レジメンのランダム化比較、ならびに化学療法と最も良い標準的ケアまたはプラセボとのランダム化比較であった。ランダム化した用量漸増研究は本レビューから除外した。

データ収集と分析: 

データ抽出に役立つようデータの抽出表を、特にこのレビューのためにデザインした。関連した研究からのデータを抽出し、試験デザイン、参加者およびアウトカムに関する情報を含めた。さらに試験の質は、ランダム化、盲験化および患者の中止の説明に対するスコアシステムを用いて評価した。

主な結果: 

検索戦略によって同定された進行前立腺癌における化学療法に関する107件のランダム化試験のうち、HRPC患者6,929例が参加した47件の試験を本レビューに含めた。同じ化学療法の介入を比較した試験は2件しかなかったので、メタアナリシスは不適切と考えられた。報告不良、患者募集不足または試験デザイン不良のためにいくつかの試験の質は不良であった。明らかにするために、使用した主な薬に従って試験を分類したが、多くの試験が数種類の薬を使用しており、複数のカテゴリーに分類されることになるので、これは決定的な分類ではなかった。薬のカテゴリーは、エストラムスチン、5-フルオロウラシル、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ミトキサントロン、ドセタキセルなどであった。ドセタキセルを使用していた研究のみから、最良の標準化ケアと比べて全生存率の有意な改善が報告されたが、増加は小さかった(2.5ヶ月未満)。ベースラインと比べてPSAの少なくとも50%低下を達成した患者の平均割合は、エストラムスチン48%、5-フルオロウラシル20%、ドキソルビシン50%(1件の研究のみ)、ミトキサントロン33%、ドセタキセル52%であった。疼痛軽減は、単剤治療患者でも併用レジメン治療患者でも、患者の35%~76%で報告された。ドセタキセルの3週間レジメンはミトキサントロン+プレドニゾンと比べて、疼痛緩和が有意に改善した(後者のレジメンは米国でHRPCの標準治療として承認されている)。すべての化学療法は単独でも併用でも毒性があり、主なものは骨髄抑制、消化管毒性、心毒性、神経障害、脱毛であった。生活の質は、ミトキサントロン+プレドニゾンと比べてドセタキセルで有意に改善した。

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