退院後の早産児に対するヒト母乳の多成分強化

早産児は、退院する時点で満期産児よりも体格が小さいことが多い。本レビューで は、非強化母乳よりも栄養素を添加した強化母乳が、これらの乳児の成長率を高め、発達に有益かどうかを評価している研究の同定を試みた。(246例の乳児に対する)2件の小規模な試験のみが確認された。これらの試験では、多成分強化が乳児期の成長率に影響を及ぼすことの一貫したエビデンスが確認されなかった。この問題を解決し、成長と発達に対する長期影響を評価するには、さらに試験が必要である。

著者の結論: 

限られたデータからは、退院後の早産児に対する多成分強化母乳による哺乳が非強化母乳による哺乳と比較して乳児期の成長率を含む重要なアウトカムに影響を及ぼすという信頼性の高いエビデンスが確認されなかった。長期成長に関するデータはない。乳房から直接哺乳される母乳の強化は管理上困難であるため(母乳哺乳を妨げる可能性がある)、母親がさらにこの介入試験を実施することを支持するかどうかが重要になる。

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背景: 

早産児は通常、退院時点では発育が遅れている。退院後の早産児に対する多成分栄養強化母乳(非強化母乳ではなく)による哺乳は、より迅速な追いつき成長を促進し、神経学的発達のアウトカムを改善する可能性がある。

目的: 

退院後の早産児の成長と発達に対する多成分強化母乳と非強化母乳の効果を評価すること。

検索戦略: 

Cochrane Neonatal Review Group の標準的検索戦略を用いた。Cochrane Central Register of Controlled Trials Register(CENTRAL、「コクラン・ライブラリ2012年第3号」)、MEDLINE、EMBASEおよびCINAHL(2012年8月まで)、会議記録、過去のレビューも電子検索した。

選択基準: 

退院後の早産児への多成分強化母乳と非強化母乳による哺乳を比較しているランダム化または準ランダム化比較試験。

データ収集と分析: 

Cochrane Neonatal Review Group の標準法を用い、2 名のレビュー著者が試験の質の評価とデータ抽出を独立して行った。また、リスク比、リスク差および平均差を用いてデータを合成した。

主な結果: 

計246例の乳児に対する2件の小規模な試験を同定した。これらの試験からは、退院後の3~4カ月にわたる多成分強化母乳による哺乳が乳児期の成長率に影響を与えることのエビデンスを得られなかった。1件の試験は補正年齢18カ月の小児を評価したが、神経発達学のアウトカムに対して統計学的に有意な効果はみられなかった。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2015.12.30]
《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。

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