ステント時代における不安定狭心症や非ST上昇型心筋梗塞に対する早期侵襲的戦略と保存的戦略の比較

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著者の結論: 

UA/NSTEMIに対して、保存的戦略と比較すると、侵襲的戦略は短期で難治性狭心症の発生率と再入院率が低下し、長期では心筋梗塞の発生率が低下した。しかし、侵襲的戦略によって手技関連の心臓発作のリスクが2倍に高まり、出血のリスクや手技関連のバイオマーカー漏出のリスクが高まる。入手可能なデータは、侵襲的戦略が再発イベントリスクが高い患者に特に有用である可能性があることを示唆している。

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背景: 

不安定狭心症および非ST上昇型心筋梗塞(UA/NSTEMI)の患者に対して、2つの戦略が可能である。すなわち、すべての患者が入院後すぐに冠動脈造影を受け、適応であれば冠動脈血行再建術を受けるルーチンの侵襲的戦略、または最初は内科的治療のみを用い、臨床症状あるいは心筋虚血が持続しているという検査上の証拠に基づいて血管造影を施行する患者を選択するという保存的戦略である。

目的: 

ステント時代においてUA/NSTEMIを治療するための侵襲的戦略を保存的戦略と比較した場合の有益性を検討する。

検索戦略: 

Cochrane Central Register of Controlled Trials(CENTRAL)(コクラン・ライブラリ 2008年第1号)、MEDLINEおよびEMBASEを、言語を制限せずに検索した(1996年から2008年2月まで)。

選択基準: 

選択した研究は、UA/NSTEMIに対する侵襲的戦略と保存的戦略を比較している前向き試験であった。

データ収集と分析: 

5件の研究(参加者7,818例)を同定した。ランダム効果モデルによるITT解析を用い、相対リスク(RR)と95%信頼区間(CI)の要約推定値を、主要エンドポイント(総死亡、致死性および非致死性の心筋梗塞、総死亡か非致死性心筋梗塞、難治性狭心症)に対して求めた。糖蛋白質(GP)IIb/IIIa受容体拮抗薬がルーチンに用いられたか否かに基づいて、選択した研究を更に解析した。異質性をChi2法および分散(I2統計量)法を用いて評価した。

主な結果: 

全研究の解析において、初期入院中の死亡は侵襲的戦略で高い傾向を示した(RR 1.59、95%CI 0.96~2.64)。侵襲的戦略は長期フォローアップで死亡を減少させなかった。6~12カ月の時点(5件の試験)および3~5年の時点(3件の試験)で評価された心筋梗塞発生率は侵襲的戦略によって有意に低下した(それぞれRR 0.73、95%CI 0.62~0.86およびRR 0.78、95%CI 0.67~0.92)。初期(<4カ月)および中期(6~12カ月)難治性狭心症の発生率はともに侵襲的戦略により有意に低下し(それぞれRR 0.47、95%CI 0.32~0.68およびRR 0.67、95%CI 0.55~0.83)、初期および中期再入院率も有意に低下した(それぞれRR 0.60、95%CI 0.41~0.88;およびRR 0.67、95%CI 0.61~0.74)。侵襲的戦略により周術期心筋梗塞(様々に定義された)のRRは2倍、(微小)出血のRRは1.7倍高まり、脳卒中には有害でなかった。