胆石症に対する漢方薬

胆石症は、世界的に著しい病的状態、重症合併症および経済的負担を引き起こしている。現在の外科的治療法は胆石に有効である。しかし、一部のタイプの胆石(例えば、ビリルビン酸カルシウム結石)は手術で簡単に除去できず、胆管系で再発することが多く、重症合併症のリスクを高める。本レビューの目的は、胆石症患者に対する漢方薬の有益性および有害性を評価することとした。一部の漢方薬は、無症候性や軽度、中等度の胆石症患者には安全のように思われるが、選択した試験は方法論の質が低い(バイアスのリスクが高い)ため、胆石に対する治療効果がはっきりとは示されていない。したがって、漢方薬を診療の場で広く用いる前に、バイアスのリスクが低いランダム化臨床試験を実施してその効果を評価するべきである。

著者の結論: 

本レビューでは、無症候性または軽度から中等度の胆石症に解析対象の漢方薬が有益な効果を及ぼす強固なエビデンスは認められない。確定的な結論を得るには、バイアスのリスクを低下させ、臨床アウトカムを詳細に評価できるような、さらに優れたデザインのランダム化試験が必要となる。

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背景: 

胆石症は、胆道系の一般的な疾患である。胆石症患者の代替治療として漢方薬は広く用いられている。ただし、漢方薬の有益性や有害性はシステマティックに評価されていない。

目的: 

胆石症患者に対する漢方薬の有益性および有害性を評価すること。

検索戦略: 

Cochrane Hepato-Biliary Group Controlled Trials Register、Cochrane Central Register of Controlled Trials (CENTRAL、コクラン・ライブラリ)、MEDLINE、EMBASE、Science Citation Index Expanded、Chinese Medicine Conference Disc、およびChinese Bio-Medicine Discを2013年1月まで検索した。中国の雑誌をハンドサーチした。言語および出版年による制限は設けなかった。

選択基準: 

胆石症治療に対する漢方薬を対象としたランダム化臨床試験。

データ収集と分析: 

2名のレビュー著者(SJ, TG)が独立してデータを抽出した。二分法データについてはリスク比(RR)、連続データについては平均差を評価した。95%信頼区間(CI)も算出した。

主な結果: 

無症候性または軽度から中等度の胆石症の参加者1205例を対象とした11件のランダム化試験を選択した。漢方薬単剤と西洋薬または手術とを比較したランダム化臨床試験はなかった。プラセボ比較試験も同定されなかった。ある漢方薬(Gandanxiaoshi錠剤)と別の漢方薬(Aihuodantong錠剤)を比較した試験では、治療後に上腹部痛の改善に有意差は認められず(RR 1.21、95%CI 0.71~2.05)、試験間の異質性は大きくなかった。他に評価できたアウトカムはなかった。他の漢方薬(Qingdanカプセル、Danshuカプセル、Paishiカプセル、Rongdanpaishiカプセル)試験では、治療群とコントロール群間で治療効果の有意差の評価ができる症状、徴候または胆石の変化に関する特定のデータを得られなかった。重篤な有害作用は報告されなかった。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2015.12.30]
《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。

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