高齢の健常人および認知症の人の予防および治療のためのビタミンB12併用または非併用による葉酸

著者の結論: 

実施されている研究の数が少なかったため、任意に抽出された高齢健常人または認知障害のある人の認知機能に対してビタミンB12併用または非併用での葉酸に有益な作用があるという一貫した根拠は得られなかった。ある予備試験では、葉酸とアルツハイマー病の人のコリンエステラーゼ阻害薬に対する反応の改善との関連があった。別の試験では、長期的摂取によって高い血中ホモシステイン濃度を有する高齢健常人の認知機能が改善されると考えられた。この重要な課題に関するさらなる研究が必要である。

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背景: 

葉酸欠乏症は、先天性神経管奇形および巨赤芽球性貧血を引き起こすことがある。葉酸値の低下は食事による葉酸の摂取不足または吸収不良によると考えられるが、代謝利用障害もおこる。B12欠乏症は葉酸欠乏症と同様の貧血を引き起こすことがあることため、葉酸補給はB12欠乏症の診断を遅らせる危険性があり、このことによって不可逆的な神経損傷が引き起こされることもある。したがって、葉酸補給剤にはビタミンB12を同時に補給できるビタミンB12補給剤が含まれている場合もある。軽度の葉酸不足は、動脈疾患、認知症およびアルツハイマー病の発症リスクと関連のあるアミノ酸ホモシステインの血中濃度を上昇させる。したがって、食事補給によって高齢者の認知機能が改善されるかどうかについて関心がもたれている。しかし、葉酸とビタミンB12の併用補給による見かけの利益は、ビタミンB12の単独効果で「補正する」必要がある。そのため、ビタミンB12と認知機能に関する別のコクラン・レビューが発表されている。

目的: 

高齢の健常人または認知症の人を対象に、認知障害を予防、またはその進行を抑える目的で、ビタミンB12併用または非併用で葉酸の補給効果を検討する。

検索戦略: 

2007年10月10日、以下の用語を用いて、Cochrane Dementia and Cognitive Improvement Group's Specialized Registerを検索して試験を同定した:folic acid(葉酸)、folate(葉酸塩)、vitamin B9(ビタミンB9)、leucovorin(ロイコボリン)、methyltetrahydrofolate(メチルテトラヒドロ葉酸)、vitamin B12(ビタミンB12)、cobalamin(コバラミン)、cyanocobalamin(シアノコバラミン)。このRegisterには、主要なすべての医療データベースおよび多数の進行中の試験のデータベースから得られた参考文献が含まれる。また、MEDLINE、EMBASE、CINAHL、PsychINFOおよびLILACSについても、高齢の健常人を対象としたビタミンB12併用または非併用の葉酸に関する試験について検索した(2003年~2007年)。

選択基準: 

高齢の健常人または何らかの認知症あるいは認知障害のある人を対象に、ビタミンB12併用または非併用の葉酸の補給とプラセボを比較したすべての二重盲検プラセボ対照ランダム化試験。

データ収集と分析: 

レビューアが独自に選択基準を適用し、試験の質について評価した。レビューア1名がデータを抽出し、分析した。プラセボと介入療法との比較では、加重平均差および標準化平均差またはオッズ比を推定した。

主な結果: 

8件のランダム化比較試験が本レビューの選択基準に適合した。4件の試験は高齢の健常人が登録されており、4件の試験は葉酸欠乏症と診断または診断されていない軽度から中等度の認知障害または認知症の参加者が組み入れられていた。サンプルの選択、アウトカム、試験期間、投与量に異質性がみられたため、データを統合することはできなかった。2件の研究は葉酸とビタミンB12を併用していた。任意に抽出した高齢の健常人の認知機能および気分に対するビタミンB12併用または非併用による葉酸補給の利益について十分なエビデンスは存在しない。しかし、高い血中ホモシステイン濃度を有する高齢健常人の特定の群を含めた1件の試験では、3年間にわたる葉酸800mcg/日の補給により、全体的機能(WMD 0.05、95%CI 0.004~0.096、P=0.033)、記憶(WMD 0.14、95%CI 0.04~0.24、P=0.006)および情報処理速度(WMD 0.09、95%CI 0.02~0.16、P=0.016)に有意な利益がみられた。4件の試験には認知障害の人が含まれていた。アルツハイマー病の人を登録していた1件のパイロット試験では、葉酸1mg/日の用量でコリンエステラーゼ阻害薬に対する総合的な反応が有意に改善されており(オッズ比:4.06,95%CI 1.22~13.53; P=0.02)、手段的ADL(Instrumental Activities of Daily Living)およびSocial Behavior subscale of the Nurse's Observation Scale for Geriatric Patientsのスコアも有意に改善されていた(WMD 4.01、95%CI 0.50~7.52、P=0.02)。認知障害の人を含めたその他の試験では、認知機能の指標に対するビタミンB12併用または非併用での葉酸の利益はみられなかった。葉酸とビタミンB12の併用は血清中ホモシステイン濃度の低下に有効であった(WMD -5.90、95%CI -8.43~-3.37、P<0.00001)。葉酸は忍容性に優れ、有害作用は報告されていなかった。

訳注: 

監  訳: 江川 賢一,2009.2.20

実施組織: 厚生労働省委託事業によりMindsが実施した。

ご注意 : この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、Minds事務局までご連絡ください。Mindsでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、編集作業に伴うタイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。

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