矯正用バンドの接着剤について

全顎固定式矯正装置を装着している患者の大臼歯に矯正バンドを装着するための最適な接着剤(セメント)に関しては、不十分なエビデンスしかない。矯正治療では、歯並びを整えるために固定式または可撤式装置(いわゆる矯正器具)を使用する。固定式装置の方が、可撤式装置よりも良い治療結果が得られることが報告されてきた。固定式矯正装置の成功の鍵は、金属製のアタッチメント(ブラケットとバンド)が歯に確実に固定され、治療期間中外れないことである。通常ブラケットは、前歯や側方歯の歯面に直接接着され、大臼歯にはバンド(歯を取り囲む金属製のリング)が一般的に使用される。大臼歯に矯正バンドを装着するための最適な接着剤(セメント)に関しては不十分なエビデンスしか存在しない。

著者の結論: 

大臼歯に矯正バンドを装着するための最適な接着剤(セメント)に関して,質の高いエビデンスは不十分である。今後さらなる複数のRCTが必要である。

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背景: 

矯正治療では、歯並びを整えるために固定式あるいは可撤式装置(いわゆる矯正器具)を使用する。固定式装置の方が、可撤式装置よりも良い治療結果が得られることが報告されてきた。それゆえ固定式矯正装置(マルチブラケット装置)は多くの矯正医に好んで使用されてきた。固定式矯正装置の成功の鍵は、金属製のアタッチメント(ブラケットとバンド)が歯に確実に固定され、治療期間中外れないことである。通常ブラケットは、前歯や側方歯の歯面に直接接着され、奥歯(大臼歯)にはバンド(歯を取り囲む金属製のリング)が一般的に使用される。バンド接着用に何種類もの接着剤が商品化されており、どの種類の接着剤が最も確実に接着できるのか、また同様に、どの種類の接着剤が、矯正治療中のむし歯を減らしたり、予防したりできるのかを理解することは重要である。

目的: 

固定式矯正装置による治療で、バンド装着用接着剤の有効性を、以下の観点から評価すること。
(1)治療期間中どの程度の頻度でバンドが脱落するか。
(2)治療期間中に、バンド装着歯のむし歯を予防することができるか。

検索戦略: 

以下の電子データベースを検索した。Cochrane Oral Health Group's Trials Register(2016年6月2日検索)、Cochrane Central Register of Controlled Trials(CENTRAL; 2016, Issue 5) in the Cochrane Library(2016年6月2日検索)、MEDLINE Ovid(1946年から2016年6月2日まで)、EMBASE Ovid(1980年から2016年6月2日まで)を検索した。進行中の試験については、ClinicalTrials.govおよびthe World Health Organization International Clinical Trials Registry Platform for ongoing trialsを検索した。電子データベース検索の際、言語や出版日には制限を設けなかった。

選択基準: 

大臼歯に矯正用バンドを装着するために接着剤を使用したランダム化比較試験(RCT)および比較臨床試験(CCT)(スプリットマウスデザイン研究を含む)が選択された。大臼歯にバンドを装着した全顎固定式矯正装置装着患者が選ばれた。

データ収集と分析: 

すべてのレビュー著者が、論文著者や使用した接着剤、得られた結果に対してブラインドすることなく、研究の選択、有効性の評価、データの抽出を行った。意見の不一致は、合議により解決した。

主な結果: 

RCT5編、CCT3編がレビューの採択基準に合致していた。採択されたすべての研究がスプリットマウスデザインであった。4編が化学硬化型リン酸亜鉛セメントと化学硬化型グラスアイオノマーセメントとを、3編が化学硬化型グラスアイオノマーセメントと光硬化型コンポマーとを、1編が化学硬化型グラスアイオノマーセメントと化学硬化型グラスホスホネートとを比較したものであった。データの解析は、採択基準に合致した研究であっても、妥当でないものがほとんどであった。

訳注: 

《実施組織》JCOHR (Japanese Collaboration for Oral Health Review)www.geocities.jp/newpublichealthmovement/jcohr/policy 南郷里奈 翻訳更新[2017.7.16]、島田達雄、毛利環 監訳 [2008.4.1]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review、Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。

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