認知症の治療に対してホメオパシーが有効であるエビデンスはない

認知症は罹患している本人および介護者にとって重要な意味があるつらい病気である。ホメオパシーは、補完医療の一つとして多く用いられている。しかし、単なるプラセボではないというエビデンスがいくつかあるものの、誰もどのように作用するか解明していないため様々な議論がある。研究者らは質の高い試験を確認していなかったため、この疾患の治療を行うことが有効であるかどうかについては言及できない。認知症に対してどの程度の量のホメオパシーを行うかの情報が入手できないため、さらなる試験を行うことが重要かどうか言及し難い。

著者の結論: 

エビデンスがないため、認知症の治療におけるホメオパシーの適用についてコメントすることはできない。認知症患者にホメオパシーが処方される範囲は不明であるため、本分野の試験を実施することの重要性に関するコメントは困難である。

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背景: 

認知症は高齢者に多く見られる病態であり、患者、その介護者、社会に重大な影響をもたらす。欧州の集団に基づく試験についてメタアナリシスを行ったところ、65歳超では認知症の有病率が6.4%であることが見出された。ホメオパシーは、「補完療法」または「代替療法」の1つとして多く用いられている。いくつかの病態においてホメオパシー治療が有効であるとのエビデンスがみられた試験もあるが、ホメオパシーで用いられる超分子希釈の作用機序を現在の科学的コンセプトに包括することはできない。

目的: 

認知症の治療を目的としてホメオパシーにより調製されており、ランダム化比較試験から確立されている薬剤の有効性と安全性のプロファイルについて評価すること。

検索戦略: 

試験は、 Specialized Register of the Cochrane Dementia and Cognitive Improvement Group、Cochrane Library、MEDLINE、EMBASE、PsycINFO、CINAHL、LILACS、clinical trials registries、灰色文献情報源 (検索日:9 March 2009) において、 alum*、homeop*、"nat sulph"、 "natrum sulphate"のキーワードを用いて検索し、抽出した。さらに、レビューアはCISCOM、AMED、Hom-Informも検索した。

ホメオパシーの分野において主要な研究者、開業医、およびメーカーにも問い合わせた。

選択基準: 

いずれの種類のランダム化比較試験であっても、20名を超えるサンプルサイズであれば検討の対象とした。

データ収集と分析: 

データベースの検索から、1件の試験が抽出された。抄録の調査後にコピーを入手し、登録についてRMとJWが独立して評価した。

主な結果: 

登録基準を満たす試験はなく、データも得られなかった。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2015.12.29]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。

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