急性虚血性脳卒中における脳浮腫の外科的減圧術

著者の結論: 

浮腫を合併した重篤な大脳半球梗塞を発症した60歳以下の患者において、外科的減圧法により死亡リスクおよびmRS > 4として定義される重度障害のリスクが軽減する。最適な患者選択基準および減圧術の時期については未だ明確ではない。外科手術は生存しても相当の障害が残る場合があるため、患者の選択に応じて、それが患者にとって最善であると想定される場合にのみ適用する治療法である。すべての試験は早期に中止されたため、効果サイズが過大評価された可能性を除外することはできない。

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背景: 

広範囲の脳梗塞は致死率が高い。過換気、マンニトール、利尿薬、副腎皮質ステロイドおよびバルビツール酸などの従来の内科的治療法を利用しても、治療後のアウトカムは不良である。頭蓋内圧低下を目的とする減圧術について、何らかの臨床的利益を裏付けるエビデンスはこれまで得られていないものの、いくつかの症例で実施されている。本レビューは2002年に初めて発表されたコクランレビューを更新したものである。

目的: 

脳浮腫を合併した重篤な急性虚血性脳卒中患者における、減圧術の効果を検討し、減圧術が生存率の改善または重度障害なき生存率の改善に有効であるかどうかを判断すること。

検索戦略: 

Cochrane Stroke Group's Trials Register (最終検索:2010年10月)、the Cochrane Central Register of Controlled Trials (CENTRAL)(コクラン・ライブラリ2010年第7号)、 MEDLINE(1966年~2010年10月)、 EMBASE (1980年~2010年10月 )および Science Citation Index (2010年10月)を検索した。また、関連性のある論文すべての参考文献リストも検索した。

選択基準: 

臨床的および放射線学的に確定された脳浮腫を合併した脳梗塞患者における、減圧術+内科的治療と内科的治療のみを比較したランダム化比較試験。

データ収集と分析: 

レビューア1名が標題を評価し、関連性のある研究を収集した。このレビューアが不明点を明確にするためにすべてのレビューアと討議しながらデータを抽出した。アウトカムは追跡調査終了時の死亡、追跡調査終了時の死亡または修正Rankinスケール(mRS)が>3として定義された障害、12カ月時点での死亡またはmRSが>4として定義された重度障害ならびに12カ月時点でのmRSが4または5として定義された障害であった。結果はPeto法を用いたオッズ比(Peto OR)と95%信頼区間(CI)を用いて示す。

主な結果: 

本レビューに60歳以下の患者134例を含む試験3件を含めた。介入の時間帯は2件が脳卒中発症後30時間であり、1件が96時間であった。試験はいずれも早期に中止された。外科的減圧法により追跡調査終了時の死亡リスク(OR 0.19、95%CI 0.09~0.37)および12カ月目の死亡ならびにmRS > 4として定義された障害のリスク(OR 0.26、95%CI 0.13~0.51)が低下した。追跡調査終了時の死亡またはmRS > 3として定義された障害については治療群間で差はなかった(OR 0.56、95%CI 0.27~1.15)。

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