手術による交差感染を軽減するための二重手袋の装着

著者の結論: 

外科チームが装着する手袋による防御の追加によって患者の手術部位感染が減少することを示す直接的なエビデンスはないが、このアウトカムに対する本レビューの検出力は不十分であった。

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背景: 

手術が侵襲性であるということは血液に暴露されることが増えることから、手術時に病原体が血液に移行するリスクが高まることを意味する。病原体は手術患者と外科チームとの接触を介して移行が可能であり、その結果、患者の術後感染や血液媒介感染、または外科チームの血液媒介感染が引き起こされる。患者および外科チームともに、このリスクから防御する必要がある。このリスクは手術用手袋の装着などの保護バリアを使用することによって軽減できる。手術用手袋の一重装着とは対照的に、二重装着、三重装着、手袋ライナーまたは布製のアウター手袋は、バリアを追加し、汚染リスクをさらに軽減させると考えられる。

目的: 

本レビューの主な目的は、手袋による防御を追加することにより患者または外科チームの手術部位感染の数や血液媒介感染の数が減少するかどうかを判定することであった。副次的目的として、手袋による防御の追加により最も内側の手術用手袋への穿孔の数が減少するかどうかを判定することとした。最も外側の手袋と比較して、最も内側の手袋(皮膚に直接触れる)は患者と外科チームとの間の最後のバリアであると考えられている。

検索戦略: 

今回の2回目の改定のために、Wounds Group Specialised Register(2009年6月)、Cochrane Central Register of Controlled Trials(CENTRAL)(2009年第2号)、Ovid MEDLINE(1950年~2009年5月第5週)、Ovid EMBASE(1980年~2009年第22週)およびEBSCO CINAHL(1982年~2009年5月第4週)を検索した。

選択基準: 

以下を対象としたランダム化比較試験:一重手袋、二重手袋、三重手袋、手袋ライナー、編みアウター手袋、スチール織アウター手袋、穿孔インジケータ・システム。

データ収集と分析: 

両レビューアが独立に各試験の関連性と質を評価した。1名のレビューアがデータを抽出し、2番目のレビューアが正確性についてクロスチェックした。

主な結果: 

主要アウトカム、すなわち患者の手術部位の感染を取り扱った2件の試験を見いだした。両試験から感染は報告されていなかった。手袋穿孔を評価していた31件のランダム化比較試験を同定し、本レビューに含めた。二重手袋に関する14件の試験(ラテックス手術用手袋の二重装着)を統合した結果、二重手袋の内側の手袋に比べ、一重手袋では穿孔が有意に多いことが示された(OR4.10、95%CI 3.30~5.09)。インジケータ手袋(チームに穿孔を迅速に知らせるためにラテックス手袋の内側に装着する着色ラテックス手袋)に関する8件の試験では、インジケータ手袋に比較して一重手袋(OR0.10、95%CI0.06~0.16)またはインジケータ手袋に比較して標準的な二重手袋で(OR0.08、95%CI 0.04~0.17)検知された穿孔が有意に少ないことが示された。手袋ライナー(2枚のラテックス手袋の間に装着する布またはポリマーで編んだ手袋)に関する2件の試験(OR 26.36、95%CI 7.91~87.82)、編み手袋(ラテックス手術用手袋の一番上に装着する編み手袋)に関する3件の試験(OR5.76、95%CI 3.25~10.20)、三重手袋(ラテックス手術用手袋を三重に装着)(OR 69.41、95%CI 3.89~1239.18)に関する1件の試験はすべて、標準的二重手袋と比較して、すべての比較において標準的二重手袋の最も内側の手袋で穿孔が有意に多いことが示された。

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