認知症に対するナフチドロフリル

著者の結論: 

ナフチドロフリルの経口投与は、認知症患者において優れた忍容性を示した。エビデンスの質は低いが、認知症患者がナフチドロフリルを服用すれば、遂行能力、行動、認知および気分の改善に有効であると示された。ただし、全般的印象度に対する利益には食い違いが見られ、説得力に欠ける。

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背景: 

認知症は、高次認知機能が永続的に失われるという特徴をもつ脳の障害である。認知症に対しては、いくつかの血管拡張性治療薬が処方されている。この1つがナフチドロフリルという医薬品であり、臨床症状を著しく改善することが報告されている。臨床診療への情報提供、及び新たな治療薬導入の際の継続的検索の指針となるべく、ナフチドロフリルの有効性と予測される有害事象をシステマティックにレビューし、批判的に評価する必要がある。

目的: 

認知症治療におけるナフチドロフリルの有効性と安全性を評価する。

検索戦略: 

検索語naftidrofurylを用いて、2011年1月11日に ALOIS:Cochrane Dementia and Cognitive Improvement Group's Specialized Registerを検索した。ALOISには、主要な医療データベース記録(MEDLINE、EMBASE、PsycINFO、LILACSおよびCINAHL)、治験レジストリ(ClinicalTrials.govなど)および灰色文献情報が含まれている。

選択基準: 

適格と判断したのは、ナフチドロフリルを用いて認知症患者の治療を行ったランダム化プラセボ比較試験である。

データ収集と分析: 

2名のレビューアが解析に組み入れるための試験を別々に選択し、試験の質を評価し、データ抽出書式を用いてデータを抽出した。バイアスのリスクについて評価した項目(domains)は、順番の作成(sequence generation)、割りつけの隠蔽化、盲検化(blinding)、不完全なアウトカムデータおよび選択的なアウトカムの報告であった。報告されている二値データにはオッズ比(OR)を利用し、連続データには平均差(MD)および標準化平均差(SMD)を用いた。I2統計量を用いて統計学的異質性を評価した。

主な結果: 

9件のランダム化比較試験を特定し、アルツハイマー病、脳血管性認知症、混合型認知症、老年認知症および分類不能な認知症の患者合計847例を組み入れた。有効とされたのは、認知症患者の機能的遂行能力と行動であるが(-1.04 標準化ポイント、95%CI -1.73~-0.35、P = 0.003)、異質性が強く(I2 = 54%)、また認知機能(-0.36標準化ポイント、95%CI -0.71~-0.02、P=0.04)と同様、気分(-0.80標準化ポイント、95%CI -1.26~-0.34、P=0.0006)にも有効であった。ただし、このことは臨床的包括尺度によっては確認されなかった。ナフチドロフリルの認知症患者における忍容性は良好であった。

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