水疱性類天疱瘡に対する治療法

水疱性類天疱瘡(BP)は、西洋では最も頻度の高い自己免疫性水疱形成疾患である。世界のほとんどの地域で罹患率の統計はないが、極東では、BPの頻度はそれほど高くないようである。水疱性類天疱瘡は通常は高齢者の疾患であるが、若い人や小児にも発症する。男女差はない。BPは通常5年以内に寛解するが、疾患や治療に関連する死亡率は中等度である。経口ステロイドが最もよく用いられる治療法であるが、死亡をはじめとする重篤な有害作用を引き起こす可能性がある。経口ステロイドの最もよくみられる有害作用に、体重増加および血圧上昇がある。長期間の使用によって、糖尿病リスクの上昇や骨密度低下の可能性がある。ほかにも、ステロイド外用薬には皮膚が薄くなることや痣(あざ)ができやすくなることなどの有害作用が認められる。ステロイド外用薬の有害作用を経験するリスクは、ステロイドの強さ、使用期間、薬を塗る体の部位および皮膚の問題の種類によって異なる。強力なステロイドを用いた場合、体のほかの部分で有害作用を引き起こすのに十分な量が皮膚を通して吸収される可能性がある。

このほかの治療法に、アザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチル、ダプソン、メトトレキサート、シクロスポリン、シクロホスファミド、血漿交換療法、エリスロマイシン、テトラサイクリンとニコチン酸アミドの併用療法などがある。このような薬剤や介入法には、重篤な感染症にかかりやすくなったり、肝臓や腎臓が障害されたり、骨髄抑制が起きたりといった重症の有害作用を引き起こす可能性があるものもある。しかも、多くの薬が非常に高価である。

今回の更新では、2005年に発表されたレビューに新たに3件の研究を加え、参加者総計1049人の総計10件のRCTを含めた。研究ではそれぞれに異なる比較が検討されていたが、プラセボ群を設けた試験はなかった。アザチオプリンは、併用するステロイドの用量や剤形で疾患コントロールに有意差はなかったが、アザチオプリンを用いることによって、疾患コントロールに必要なプレドニゾンの量が減少した。アザチオプリンとミコフェノール酸モフェチルの比較では、寛解および無病期間に有意差はなく、テトラサイクリンとニコチン酸アミドの併用療法とプレドニゾンの比較では奏効率に有意差はなかった。中国の伝統薬Jingui Shenqi Pill(JSP)を用いた1件の小規模研究では、この中国の伝統的なハーブ療法をプレドニゾンに追加する利益は示されなかった。死亡例のほとんどが、高用量の経口ステロイドを服用した参加者であった。

今回のレビューでは、比較的低用量の経口ステロイドおよび強力なステロイドクリームが安全で効果的であるように思われると結論した。しかし、疾患が広範囲に及ぶ場合は、副作用や、肌の広い部分にクリームを塗る実用性を考えると、ステロイドクリームの有用性は限定的なものになる可能性もある。ステロイド外用薬の低用量のレジメンは、中等度のBPに安全で効果的である。BPの治療法に関しては、特に血漿交換療法や、アザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチルをステロイドに追加して得られる効果、さらにテトラサイクリンとニコチン酸アミドの併用療法の有効性を明らかにするために、さらに研究が必要である。

著者の結論: 

非常に強力なステロイド外用薬は、BPの効果的で安全な治療であるが、副作用および実用面の問題があるため、疾患が広範囲の症例では使用が限定的である。低用量のステロイドを用いたレジメンは、中等度のBPに安全で効果的である。プレドニゾロンの初回投与量が0.75mg/kg/日を超えても、追加の利益はない。疾患をコントロールし、有害作用の発現率や重症度を下げるには、低い用量で十分であると思われる。血漿交換療法、アザチオプリンまたはミコフェノール酸モフェチルを副腎皮質ステロイドに追加する効果、さらにテトラサイクリンとニコチン酸アミドの併用療法の有効性を明らかにするためにはさらに検討が必要である。

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背景: 

水疱性類天疱瘡(BP)は、西洋では最も頻度の高い自己免疫性水疱形成疾患である。経口ステロイドが標準治療である。これは、2005年に発表されたレビューの更新である。

目的: 

水疱性類天疱瘡に対する治療法を評価すること。

検索戦略: 

2010年8月に、Cochrane Skin Group Specialised Register、Cochrane Central Register of Controlled Trials(Clinical Trials)、MEDLINE、EMBASEおよびOngoing Trials registersの検索を更新した。

選択基準: 

免疫蛍光法によって確認された水疱性類天疱瘡に対する治療を検討したランダム化比較試験(RCT)とした。

データ収集と分析: 

少なくとも2名の著者が独立して、研究の選択基準に基づいて評価し、データを抽出した。

主な結果: 

バイアスのリスクが中等度ないし高いRCT10件(参加者は総計1049例)を採用した。研究ではそれぞれに異なる比較が検討されていたが、プラセボ群を設けた試験はなかった。1件の試験では、1カ月の時点で、血漿交換療法とプレドニゾンの併用療法(0.3mg/kg:RR 18.78、95%CI 1.20~293.70)の方が、 プレドニゾン単剤療法(1.0mg/kg:RR 1.79、95%CI 1.11~2.90)よりも疾患コントロールが有意に優れていたが、もうひとつの試験では、6カ月の時点で、疾患コントロールに差がなかった。

プレドニゾロンのさまざまな用量または剤形の比較(それぞれ1件の試験)、アザチオプリン+プレドニゾンの併用療法とプレドニゾン単剤療法の比較(1件)、プレドニゾロン+アザチオプリンの併用療法とプレドニゾロン+血漿交換療法の比較(1件)、プレドニゾロン+ミコフェノール酸モフェチルの併用療法とプレドニゾロンとアザチオプリンの併用療法の比較(1件)、テトラサイクリン+ニコチン酸アミドの併用療法とプレドニゾロンの比較(1件)では、いずれも疾患コントロールに差は認められなかった。1件の試験で、中国の伝統薬とプレドニゾンの併用療法に有効性は示されなかった。

ステロイド外用薬(クロベタゾール)の標準レジメンと、より低用量のレジメンを比較した1件の試験では、治癒に有意差は認められなかった(RR 1.00、95%0.97~1.03)。別の試験では、クロベタゾールが、経口プレドニゾロンに比べ、疾患が広範囲にわたる人および中等度の人で疾患コントロールの有意な改善(RR 1.09、95%CI 1.02~1.17)と死亡率および有害事象の有意な低下(RR 1.06、95%CI 1.00~1.12)が示された。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2015.12.26]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。

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