人工呼吸器管理を受けた極低出生体重早産児での慢性肺疾患予防を目的とした吸入副腎皮質ステロイド(薬)(以下、ステロイド)と全身ステロイドとの比較

呼吸補助を要する早産児では慢性肺疾患が発症することが多い。肺での炎症が一因であると考えられている。経口投与または静脈内投与のステロイド薬は、この炎症を低減する可能性があるが、ステロイドの使用には重篤な副作用が伴う。ステロイドの使用は、脳性まひ(運動障害)および発達遅滞に関連する。吸入ステロイドは薬が肺に直接届くため有害作用が少ない可能性がある。本レビューでは、呼吸補助を受けている早産児で吸入ステロイド投与の者と全身へのステロイド投与(静脈内または経口)を受けた者を比較した試験について検討した。吸入ステロイドによりCLDが予防された、あるいは児が呼吸補助を要した日数および酸素補充を要した日数が減少したというエビデンスは認められなかった。

著者の結論: 

呼吸器を必要とする早産児の管理において、早期吸入ステロイドの方が全身ステロイドに比べて重大な利益をもたらすというエビデンスを本レビューでは認めなかった。吸入ステロイドと全身ステロイドのいずれも、人工呼吸器管理の早産児に対する標準診療の一部として推奨できない。吸入ステロイドは全身ステロイドより有害作用が少ない可能性があるため、様々な投与法、投与スケジュール、特に神経発達アウトカムに注目した長期的効果のリスク/利益比に取り組むような、吸入ステロイドについてのさらなるRCTが必要である。

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背景: 

慢性肺疾患(CLD)は、依然として早産児の死亡と罹病の重要な原因の一つであり、その病理発生において炎症が重要な役割を担っている。吸入ステロイドの使用により、全身へのステロイド濃度が同時に高くなることなく炎症過程を変化させ、有害作用リスクが少なくなる可能性がある。

目的: 

人工呼吸器管理を受けた極低出生体重(VLBW)児でのCLD予防に対する、生後2週以内に開始された吸入ステロイドの効果を全身ステロイドと比較し検討すること。

検索戦略: 

コクラン・ライブラリ、MEDLINE、EMBASE、CINAHL、発表された研究の文献リスト、Pediatric ResearchまたはPediatric Academic Societies web site電子版での発表抄録を2007年6月に検索し、ランダム化試験および準ランダム化試験を同定した。本検索を2011年6月に更新し、Clinicaltrials.gov、Controlled-trials.com、Web of Scienceに対するその後追加された検索を含めた。

選択基準: 

補助呼吸を受けているVLBW児を対象に生後2週以内に開始した、吸入ステロイドを全身ステロイド療法(用量と治療期間を問わず)と比較しているランダム化臨床試験または準ランダム化臨床試験

データ収集と分析: 

生後28日目または妊娠週数(PMA)36週時のCLD、死亡率、生後28日目またはPMA36週時の死亡またはCLDという複合アウトカム、他の呼吸系アウトカム、有害作用などのアウトカムを評価した。RevMan 5.1を用いてすべてのデータを解析した。相対リスク(RR)、リスク差(RD)、平均差(MD)およびその95%信頼区間(CI)を用いてメタアナリシスを実施した。RDが有意の場合、利益に対する治療必要数(NNTB)または害に対する治療必要数(NNTH)を算出した。

主な結果: 

本更新で新たな試験は同定されなかった。本レビューにおいて2件の試験が選択基準を満たした。PMA36週時のCLD罹患率は、吸入ステロイド群で上昇した(統計学的有意性はボーダーラインである)[RR 1.45 (95%CI 0.99~2.11)、RD 0.11 (95%CI 0.00~0.21)、p = 0.05、1試験、278名]。全生存者でのPMA36週時のCLD罹患率[RR 1.34 (95%CI 0.94~1.90)、RD 0.11 (95%CI -0.02~0.24)、1試験、206名]、生後28日目の酸素依存性(2試験、294名)、生後28日目までの死亡(2試験、294名)、生後28日目までの死亡とCLDの複合アウトカム(2試験、294名)、PMA36週時までの死亡とCLDの複合アウトカム(1試験、278名)に群間で有意差はなかった。機械的換気期間は、全身ステロイド群に比べて吸入ステロイド群の方が有意に長く[定型的MD 4日(95%CI 0.2~8)、2試験、294名]、酸素補充期間も同様であった[定型的MD 11日(95%CI 2~20)、2試験、294名]。 高血糖罹患率は、吸入ステロイド群の方が有意に低かった[RR 0.52 (95%CI 0.39~0.71)、RD -0.25 (95%CI -0.37~-0.14)、1試験、278名;1名の児の高血糖発症を回避するNNTB 4 (95%CI 3~7)]。動脈管開存症の率は吸入ステロイド群で上昇した[RR 1.64 (95%CI 1.23~2.17)、RD 0.21 (95% CI 0.10~0.33)、1試験、278名;NNTH 5 (95%CI 3~10)]。長期の神経発達アウトカムに関する情報は得られなかった。

訳注: 

監  訳: 江藤 宏美,2012.9.27

実施組織: 厚生労働省委託事業によりMindsが実施した。

ご注意 : この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、Minds事務局までご連絡ください。Mindsでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、編集作業に伴うタイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。

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