人工呼吸器管理を受けた極低出生体重早産児での慢性肺疾患(CLD)の治療を目的とした吸入副腎皮質ステロイド(薬)(以下、ステロイド)と全身ステロイドとの比較

早産児(40週の妊娠期間で、正期産より前に生まれた児)は、呼吸困難を生じ呼吸補助(人工呼吸器による補助)を要することが多い。呼吸補助を長期に必要とする児では、慢性肺疾患(CLD)を発症することが多い。肺での炎症が一因であると考えられている。経口投与または静脈内投与のステロイド薬は、この肺での炎症(腫脹)を低減するため、そのような状態の治療に用いられる。しかし、ステロイドの使用は重篤な副作用を伴う。ステロイドの使用は、脳性麻痺(運動障害)および発達遅滞に関連する。吸入ステロイドは、薬が肺に直接到達するため有害作用を少なくする方法として試みられている。試験についての本レビューでは、吸入ステロイドによる有益性はないという所見が得られた。いずれかの方法によるステロイドのルーチン使用により、CLDリスクのある児の全身的な健康が改善するかを示すため、さらなる研究が必要である。

著者の結論: 

人工呼吸器を要する早産児の管理において、吸入ステロイドの方が全身ステロイドよりも有益であるというエビデンスは、本レビューでは認められなかった。吸入ステロイドと全身ステロイドのいずれも、人工呼吸器管理の早産児に対する標準治療として推奨できない。吸入ステロイドと全身ステロイドとの比較で、有効性または副作用の側面に差があるというエビデンスはなかった。肺胞への吸入ステロイドの選択的送達を保障する投与システムにより、副作用が増加することなく臨床効果がもたらされる可能性がある。本課題を解決するため、これらの薬剤の投与について、様々な送達方法と投与スケジュールのリスク/利益比を同定する研究が必要である。今後の研究では、特に神経発達アウトカムに注目した、吸入ステロイドの長期的効果に取り組むべきである。

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背景: 

呼吸窮迫症候群の罹患率と重症度を低下させるための出産前ステロイド投与と出生後のサーファクタント療法にもかかわらず、慢性肺疾患(CLD)は極低出生体重(VLBW)児における依然として重篤な頻度の高い疾患である。ステロイドはその抗炎症作用のため、CLDの治療または予防に広く使用されている。しかし、全身ステロイドは重篤な短期・長期の有害作用に関連している。気道からの局所ステロイド投与により、望ましくない全身への副作用が少なくなり呼吸系に有益な効果がもたらされる可能性がある。

目的: 

出生体重1,500グラム未満または在胎期間32週未満の人工呼吸器を要する早産児に、CLD進行の治療を目的にして生後2週以降に投与される吸入ステロイドの効果を全身ステロイドと比較して検討すること。

検索戦略: 

Cochrane Central Register of Controlled Trials(CENTRAL、コクラン・ライブラリ2007年第3号)、MEDLINE(1966~2007年6月)、EMBASE(1980~2007年6月)、CINAHL(1982~2007年6月)、発表された研究の文献リスト、Pediatric ResearchまたはPediatric Academic Societies web-site電子版(1990~2007年4月)での発表抄録を検索した。本検索を2011年6月に更新し、Clinicaltrials.gov.、Controlled-trials.com、Web of Scienceに対するその後追加された検索を含めた。

選択基準: 

人工換気を要するVLBW児を対象に生後2週以降に開始した、吸入ステロイドを全身ステロイド療法(用量と治療期間を問わず)と比較しているランダム化試験または準ランダム化試験

データ収集と分析: 

臨床アウトカムに関するデータを抽出し、Review Managerを用いて解析した。適時メタアナリシスを行い、相対リスク(RR)、リスク差(RD)、重み付け平均差(WMD)およびその95%信頼区間(CI)を算出した。RDが統計学的に有意の場合、利益に対する治療必要数(NNTB)または害に対する治療必要数(NNTH)を算出した。

主な結果: 

CLD治療を対象に吸入ステロイドと全身ステロイドを比較している5件の試験を同定した。2件はどちらも人工呼吸器を要しない患者を組み入れていたため除外し、3件が本レビューにおいて選択基準を満たしていた。2011年の更新では、新たな試験を同定しなかった。 Hallidayら(Halliday2001年)は生後72時間未満の児(292名)をランダム化し、Rozyckiら(Rozycki2003年)とSuchomskiら(Suchomski2002年)は12~21日目の児をランダム化していた。RozyckiらとSuchmoskiらの2つの試験のデータをメタアナリシスを用いて統合した。Hallidayらによる試験のデータは、ランダム化時点によると、日齢とは異なる期間でアウトカムを測定していたため別に報告する。 ランダム化されたすべての児において、PMA36週時のCLD罹患率について群間に統計学的有意差を示した試験はなかった。Hallidayら(Halliday2001年)の試験での推定値は、RR1.10(95%CI0.82~1.47)、RD0.03(95%CI-0.08~0.15)であった。 Rozyckiら(Rozycki2003年)の試験とSuchomskiら(Suchomski2002年)の試験では、定型的RRは1.02(95%CI0.83~1.25)で、定型的RDは0.01(95%CI-0.11~0.14)(症例数139名)であった。28日齢での酸素依存性、28日またはPMA36週までの死亡、28日目またはPMA36週時の死亡またはCLDの複合アウトカム、挿管期間、酸素依存期間、有害作用について、どちらの試験でも群間に統計学的有意差はなかった。長期の神経発達アウトカムに関する情報は得られなかった。

訳注: 

監  訳: 江藤 宏美,2012.9.27

実施組織: 厚生労働省委託事業によりMindsが実施した。

ご注意 : この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、Minds事務局までご連絡ください。Mindsでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、編集作業に伴うタイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。

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