皮膚疣贅に対する局所療法

ウイルス性疣贅は一般的な皮膚疾患で、手や足に最も多く発生し、ヒトパピローマウイルスによって引き起こされる。疣贅に有害性はなく、通常は治療をしなくてもしばらくすると消失するが、見た目が悪く、痛みを伴う場合がある。足の裏の疣贅は「plantar wart(足底疣贅)」や「verruca(足の裏の疣)」とも呼ばれる。

このレビューでは性器疣贅の治療法は対象としておらず、ランダム化比較試験の結果から得られたエビデンスのみを考慮した。

サリチル酸(SA)は安価で入手が容易な疣贅に塗布する液剤で、プラセボと比較して軽微ではあるが確実な効果が認められた。SAはあらゆる部位の疣贅に効果があり、有害作用はほとんど認められないが、効果が認められるまでに毎日使用しても数週間かかる場合がある。

凍結療法は通常液体窒素を使用し、疣贅の治療に利用されることが多いが、利便性が低く、痛みが強く、費用もかかる。1件の研究から、凍結療法は手の疣贅に対してSAよりも有効であるというエビデンス(証拠)が得られたが、この研究結果を他の研究結果と統合した場合には、このエビデンスを裏付けることはできなかった。侵襲性の高い凍結療法は侵襲性の低い凍結療法よりも有効である可能性が考えられたが、痛み、水疱形成、瘢痕形成などの有害作用が発生する可能性が高い。疣贅に対する凍結療法に関する臨床試験から得られた情報のみを検証しており、院外での凍結治療については検証していないため、院外での凍結治療が同様に有効であるかどうかは不明である。

このレビューの前版を作成中に、ダクトテープが安全で単純かつ簡便な治療法であることを支持する結果が得られたが、根拠となった試験は比較的小規模であった。今回の改訂版レビューでは、ダクトテープに関する試験を新たに2件見いだし、この治療法が当初考えていたよりも効果が低いことが示唆された。

このレビューで対象とした他の治療法は、5-フルオロウラシル、ジニトロクロロベンゼン、ブレオマイシン病変内投与、インターフェロン病変内投与、光線力学療法および抗原病変内投与などである。これらの治療法は皮膚科専門医であっても利用頻度は低く、有効性に関するエビデンスが非常に少ない。入手可能な限られたエビデンスは、これらの治療法の一部に有効性が認められる可能性を示唆しているため、サリチル酸や凍結療法などの単純で安全な治療法に反応しない疣贅に対して利用できるかもしれない。

全体では、多くの研究の質が低かったため、非常に広範な研究から「どれが有効か」という有用な見解を述べることは難しい。

著者の結論: 

SAや凍結療法を比較した2件の新たな試験データから、両治療法の有効性に関してこれまでより高い評価が得られた。エビデンスの一貫性はSAの方が優れているが、その治療効果は軽微である。総じて、凍結療法とプラセボを比較した試験では両者の有効性に有意差は認められなかったが、凍結療法とSAを比較した試験でも同様の結果が得られた。凍結療法が手の疣贅に限りSAやプラセボよりも優れていることが1件の試験でのみ示された。疼痛、水疱形成、瘢痕形成などの有害作用は稀であったが、おそらく凍結療法では発現率が高い。

レビューの対象とした他の治療法はいずれもSAまたは凍結療法と比較して安全性および有効性が低いと考えられた。透明ダクトテープに関する2件の試験では、プラセボに対する有意性は認められなかった。ジニトロクロロベンゼン(および場合によってはこれに類する他の接触感作性物質)は難治性疣贅の治療に有用である可能性がある。

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背景: 

ウイルス性疣贅は一般的な皮膚疾患で、その重症度は、多少気にはなるが自然軽快するというものから煩わしく慢性的なものまで様々である。多種多様な局所療法が利用可能である。

目的: 

健康で免疫が正常な成人および小児を対象に、性器疣贅を除く皮膚疣贅に対する局所療法の有効性を評価すること。

検索戦略: 

次のデータベース検索を2011年5月まで更新した:Cochrane Skin Group Specialised Register、コクラン・ライブラリのCENTRAL、MEDLINE(2005年以降)、EMBASE(2010以降)、AMED(1985年以降)、LILACS(1982年以降)およびCINAHL(1981年以降)。文献の参考文献リストおよび進行中の試験のオンライン試験登録データベースを検索した。

選択基準: 

性器疣贅を除く皮膚疣贅の局所療法に関するランダム化比較試験(RCT)。

データ収集と分析: 

2名の著者が独立して試験を選出し、データを抽出した。第3の著者が相違点を解決した。

主な結果: 

計8815例の参加者をランダム化した85件の試験を組み入れた(本改訂では新たに26件の研究を追加した)。治療法は多岐にわたり、試験デザインは様々であった。研究の多くは、試験デザインの1つまたは複数の領域においてバイアスのリスクが高いと判断された。

サリチル酸(SA)とプラセボを比較した試験では、SAがすべての部位において疣贅消失率を有意に上昇させた(RR[リスク比]1.56, 95%CI[信頼区間]1.20〜2.03)。部位別のサブグループ解析では、手(RR 2.67, 95%CI 1.43〜5.01)と足(RR 1.29, 95%CI 1.07〜1.55)を比較した結果、足よりも手に有効であることが示唆された。

あらゆる部位の疣贅に対して凍結療法とプラセボを比較したメタアナリシスでは、介入群および対照群のいずれも有意性は認められなかった(RR 1.45, 95%CI 0.65〜3.23)。部位別のサブグループ解析では、手(RR 2.63, 95%CI 0.43〜15.94)と足(RR 0.90, 95%CI 0.26〜3.07)を比較した結果、凍結療法でも足より手のアウトカムが優れていることが示唆された。1件の試験では、凍結療法は手の疣贅に関してのみプラセボやSAよりも優れていることが示された。

凍結療法の治療間隔が2週間、3週間および4週間の間で治癒率に有意差は認められなかった。

高侵襲性凍結療法は低侵襲性凍結療法と比較して効果が高いと考えられるが(RR 1.90, 95%CI 1.15〜3.15)、有害作用が増加する。

メタアナリシスでは、いずれの部位(RR 1.23, 95%CI 0.88〜1.71)でも凍結療法とSAの間で有効性に有意差は認められず、手と足のサブグループ解析でも有効性に有意差は認められなかった。

328例が参加した2件の試験では、SAと凍結療法を併用した場合、SA単独の場合と比較して効果が高いと考えられた(RR 1.24, 95%CI 1.07〜1.43)。

ブレオマイシン病変内投与の有益性は依然として不明である。31例が参加した最も有益な試験では、ブレオマイシン注射と生理食塩水注射の間で治癒率に有意差は認められなかった(RR 1.28, 95%CI 0.92〜1.78)。

80例が参加した2件の試験では、ジニトロクロロベンゼンはプラセボと比較して2倍超の効果が認められた(RR 2.12, 95%CI 1.38〜3.26)。

193例が参加した2件の試験では、透明ダクトテープをプラセボと比較した結果、有意性は認められなかった(RR 1.43, 95%CI 0.51〜4.05)。

次の治療法に関する試験データは統合することができなかった:5-フルオロウラシル病変内投与、亜鉛局所投与、硝酸銀(有益性が認められる可能性が示された)、5-フルオロウラシル局所投与、パルスダイレーザー、光線力学療法、80%フェノール、5%イミキモドクリーム、抗原病変内投与、およびアルファ−ラクトアルブミン−オレイン酸局所投与(プラセボと比較して有意性は認められなかった)。

手術(掻爬術、切除術)、ホルムアルデヒド、ポドフィロトキシン、カンタリジン、ジフェンシプロンおよびスクアリン酸ジブチルエステルを評価したRCTは同定しなかった。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2015.12.26]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。

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