女性の尿失禁に対する従来の尿道下スリング術

この日本語訳は最新版ではない。 ここをクリックし最新の英語版をご覧ください。
著者の結論: 

従来の尿道下スリング術は低侵襲スリング術と同様に有効であると思われるが、有害作用の率が高くなっていた。しかし、研究のエビデンスの質にばらつきがあり、追跡期間が短く、集団が小規模であるため、特に合併症率の同定については、以上の結果を慎重に解釈すべきである。従来の尿道下スリング術は、開腹恥骨後方膣吊上術に比較して同等の治癒率が得られたようであるが、長期にわたる有害事象プロファイルはまだ明らかになっていない。従来の尿道下スリング術が他の外科的または保存的な治療選択肢よりも優れているのか劣るのかを明らかにするには、信頼できるエビデンスが不足している。

アブストラクト全文を閲覧
背景: 

従来の尿道下スリング術は、腹圧性尿失禁症状のある女性の治療に使用される外科的手術である。

目的: 

腹圧性尿失禁または混合型尿失禁に対する従来の尿道下スリング術の効果を他の治療選択肢と比較して判定すること。

検索方法: 

Cochrane Incontinence Group Specialised Register(2010年6月3日検索)、関連性のある論文の参照文献リストを検索した。

選択基準: 

腹圧性尿失禁または混合型尿失禁の治療として従来の尿道下スリング術を実施したランダム化試験または準ランダム化試験。

データ収集と分析: 

少なくとも3名のレビューアが別々に、レビュー対象の試験から標準のフォームにデータを抽出し、試験手法の質を評価した。抽出したデータは、事前に定めたアウトカム指標に関連性のあるものであった。可能であれば要約統計量、すなわち、2値データについては相対リスク、連続量データについては重み付け平均差を計算した。

主な結果: 

2,284例の女性を対象とする26件の試験が選択基準に合致した。ほとんどの試験においてエビデンスの質は中等度であり、追跡期間は全般的に短く、6~24カ月間であった。1件の中規模サイズの試験では、混合型尿失禁患者の治療として従来の尿道下スリング術をオキシブチニン投与と比較していた。患者報告に基づけば尿失禁の治療には薬剤よりも手術の方が有効のようであった[75例、リスク比(RR) 0.18、95%信頼区間(CI) 0.08~0.43]。1件の試験では、経尿道注入療法に比較して、従来の尿道下スリング術は有効性が高く(1年以内に臨床医が評価した尿失禁に関するRR 0.21、95%CI 0.09~0.21)、平均費用も安いことが明らかになっていた。7件の試験では、尿道下スリング術を開腹恥骨後方膣吊上術と比較していた。患者報告による尿失禁は1年後にスリングの方で減少していたが(RR 0.75、95%CI 0.62~0.90)、臨床医による評価では減少は認められなかった。しかし、膣吊上術ではスリングに比較して、周術期の合併症が少なく、留置カテーテルの使用期間が短く、排尿機能障害の期間が短かった。1件の試験によって、膣吊上術に比較してスリング術では膀胱穿孔のリスクが20%低いが、尿路感染症が50%高いことが明らかになっていた。2件の小規模な試験では、スリング術後に脱出が発生した女性の数が膣吊上術後の女性に比較して少なかったが、統計学的有意性には達しなかった。12件の試験では、従来の尿道下スリング術と低侵襲スリング術を比較していた。これらの手術では短期間で同等の効果が得られたようであるが(術後1年以内の尿失禁に関するRR 0.97、95%CI 0.78~1.20)、低侵襲スリング術では従来のスリング術と比較して手術時間が短く、周術期の合併症(膀胱穿孔以外)が少なく、また、術後の排尿機能障害および排尿筋症状が少ないという多少のエビデンスが認められた。6件の試験では、1種類の従来の尿道下スリング術を別のスリング術と比較していた。材料はブタ真皮、凍結乾燥硬膜、大腿筋膜、膣壁、自己由来真皮、腹直筋膜などであった。術後1年以内の患者報告による改善率は、従来の自己由来材料である腹直筋膜の方が他の生物材料よりも良好であった(RR 0.45、95%CI 0.21~0.98)。1件の試験では、非吸収性ゴアテックスの使用によって合併症が増加していた。針式膀胱頸部挙上術と尿道下スリング術を比較したデータは、小規模かつ特殊な集団を対象にした単一試験によるデータであるため、結論を出すには至らなかった。従来の尿道下スリング術を前膣壁形成術、腹腔鏡下恥骨後方膣吊上術、人工括約筋と比較した試験はなかった。ほとんどの試験では、患者の特徴を報告する際には、手術を受けた女性の尿失禁の初発と再発を区別していなかった。ほとんどの比較において、臨床的に重要な差を除外することはできなかった。

訳注: 

監  訳: 内藤 徹,2011.10.4

実施組織: 厚生労働省委託事業によりMindsが実施した。

ご注意 : この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、Minds事務局までご連絡ください。Mindsでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、編集作業に伴うタイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。

Share/Save