成人の便失禁に対する電気刺激

便失禁(排便のコントロールができないこと、または肛門から便が漏出すること)は、恥ずかしい気持ちとともに社会的な制約を強いられる問題である。便失禁には、出産時に排便をコントロールする筋肉を損傷するなど、考えられる原因は多くある。便失禁の人の治療には、このような筋肉に対して直接電気刺激を与える方法がこれまで用いられてきた。本レビューによって、電気刺激が有効か否か判断するため実施された試験からは、十分なエビデンスが得られていないことが明らかになった。出産後に便失禁の症状がみられる女性では、肛門の訓練と電気刺激を用いることによって、膣の訓練を凌ぐ効果が得られる可能性がある。

著者の結論: 

現時点では、便失禁の管理に対する電気刺激の効果に関して、信頼性の高い結論を導くことができるデータは十分に存在しない。電気刺激は治療効果をもたらす可能性があることが示唆されるものの、明らかではない。より一般化された大規模試験の実施が求められる。

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背景: 

便失禁は、とりわけ恥ずかしく惨めに感じさせる疾患であり、医学的重要性が高く、また社会的および経済的な影響は重大である。便失禁の治療には、これまで電気刺激が用いられてきており、明らかな効果が得られている。しかし、標準治療は依然として存在せず、報告されている効果の程度は未だ実証されていない。

目的: 

成人の便失禁治療に対する電気刺激の効果を明らかにする。

検索戦略: 

Cochrane Incontinence Group Specialised Trials Register(2007年3月13日に検索)および適格であると考えられる論文の引用文献一覧を検索した。

選択基準: 

便失禁を呈する成人に対する電気刺激を評価したすべてのランダム化試験および準ランダム化試験を選択した。

データ収集と分析: 

レビューア2名が、適格であると考えられる試験について方法論的な質を評価し、組み入れた試験からそれぞれデータを抽出した。さまざまなアウトカム指標を検討した。

主な結果: 

4試験(参加者260例)を同定した。1試験における知見から、出産に関連した便失禁を呈する女性では、膣バイオフィードバック訓練と比較して、電気刺激と肛門バイオフィードバック訓練の併用は短期的な効果をもたらすことが示唆される。別の試験では、電気刺激によって、バイオフィードバック訓練単独を上回る上乗せ効果は認められないとの相反する結果が示された。いずれの試験においても、患者の症状は概して改善したが、電気刺激による効果であるかは明らかではない。入手したデータからは、これ以上の結論を導くことはできなかった。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2018.1.21]
《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 
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