神経遮断薬誘導性の遅発性ジスキネジアに対するビタミンE

レビューの論点

ビタミンEは、統合失調症や同様の精神疾患の人が抗精神病薬を服用する際の不快な副作用(遅発性ジスキネジア(tardive dyskinesia:TD))の治療に役立つか。

背景

統合失調症の人は、声が聞こえたり何かが見えたり(幻聴、幻覚)、奇妙な思い込み(妄想)を持つことが多い。これらの症状は通常、抗精神病薬で治療する。しかし、これらの薬剤は体を衰弱させる副作用を呈す可能性がある。遅発性ジスキネジアは、顔面、口、舌、顎の震え、けいれん、ゆがみを引き起こす不随意運動である。これは、抗精神病薬の長期服用または高用量の服用が原因で、治療は難しく、不治の可能性もある。ビタミンEは1つの治療法として示唆されるが、これまで、この用途でのビタミンEの有益性は小さいとされている。

研究の特性

Cochrane Schizophrenia Group's register of trialsを用いて2015年7月と2017年4月に試験を検索した。今回のレビューは、統合失調症や他の慢性精神疾患で抗精神病薬服用の結果、TDを発症した人に対するビタミンEの効果を調査した13件の不十分なランダム化試験の報告を対象とした。試験は長期的に罹患している参加者478例をランダムに抽出した。

主要な結果

ビタミンEは遅発性ジスキネジアから保護する可能性がある。しかし、ビタミンEがこの厄介で外見を損なう症状を改善する明らかな科学的根拠(エビデンス)はない。

エビデンスの質

得られたエビデンスは弱く、限定的で不十分であり、抗精神病薬誘導性の遅発性ジスキネジアに対するビタミンEの使用に関して、いかなる結論も出すことができなかった。このビタミンが、遅発性ジスキネジアに対して有効な治療選択肢になるかどうかを決定するためには、多くの参加者を対象とし、長期に渡りビタミンEの効果を調査したよくデザインされた試験が必要である。

この平易な要約は、もともとBen Gray, Senior Peer Researcher, McPin Foundationにより書かれた要約からレビュー著者らが引用したものである。 (http://mcpin.org/)

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2019.09.30]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD000209.pub3》

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