胎児機能不全に対する母親への酸素投与

分娩時の女性への酸素投与が胎児に有益か否かを明らかにするエビデンスはほとんど得られていません。 胎児の一部は分娩時に、心拍数異常または排便(胎便)など機能不全の徴候を示すことがあります。これは胎盤を通って母親から胎児に運ばれる酸素が不足しているためと思われます。場合により女性は、胎児が利用可能な酸素を増加させるため、マスクを用いて十分に酸素を吸うよう(酸素投与)促される場合があります。2件の試験のレビューでは、分娩第2期における女性への酸素投与が胎児に有用か否かを示すエビデンスがほんのわずかしか得られませんでした。胎児が機能不全の徴候を示す際の酸素投与に関する試験は見出されませんでした。さらなる研究が必要です。

著者の結論: 

実践への適用 分娩時の女性に対する予防的な酸素投与の適用を裏づけるあるいは、胎児機能不全に対するその有効性を評価するのに十分なエビデンスは得られなかった。 研究への意義 分娩時の酸素投与について、それが広範に使用されている事実およびそれが無効または有害である可能性を考慮し、その効果を評価するランダム化試験は早急に実施する必要がある。

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背景: 

母親からの利用可能な酸素を増加させることにより胎児機能不全を減少させようという試みで、母親への酸素投与が行われてきた。この方法は、分娩時の胎児機能不全が疑われる例に対し適用される他、胎児機能不全のリスクが高まると思われる分娩第2期で予防的に適用されてきた。

目的: 

本レビューの目的は、分娩時の胎児機能不全に対する母親への酸素投与効果を評価し、分娩第2期での予防的酸素療法の周産期アウトカムに対する効果を評価することであった。

検索戦略: 

Cochrane Pregnancy and Childbirth Group's Trials Register(2012年10月22日)を検索し、検索した試験の文献を検索した。

選択基準: 

分娩時の胎児機能不全に対する母親への酸素投与および分娩第2期の予防的酸素投与を対照群(ダミーまたは酸素投与なし)と比較するランダム化試験

データ収集と分析: 

2名のレビューアが適格性および試験の質を評価した。データを抽出・チェックし、Review Managerソフトウェアに入力した。二値データについては、相対リスク(RR)および95%信頼区間(CI)を算定した。連続データについては、重み付け平均差および95%CIを算定した。

主な結果: 

胎児機能不全に対する母親への酸素投与を検討する試験は同定されなかった。分娩時の予防的酸素投与を検討する2件の試験を組み入れた。酸素投与群では臍血帯pH値異常(7.2未満)の記録頻度が対照群より有意に高かった(RR 3.51、95%CI 1.34~9.19)。その他に統計学的に有意な群間差を認めなかった。臍動脈pH値に対する酸素投与時間の影響について両試験間で結論が一致しなかった。

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